2018/05/27

住宅街の無電柱化は可能か・・・?

都市基盤が脆弱な日本の都市!

 以前にも述べたように、日本の都市計画は、ほとんどが現状を追認したもので、決して、望ましい都市の将来像を描いているとは言い難いものです。

 そのため、狭隘道路の解消などは一向に進まず、個人の宅地はどんどんが狭小化され、防災面でも環境面でも良くなるどころか悪化しているところもあります。社会的問題ともなっています保育園の騒音問題、住宅の日照問題、低層・高層建築物の混在、住宅・商業施設の隣接など、都市環境の悪化、トラブルが絶えません。また、非効率な土地利用により、狭い国土が余計狭くなっています。

世界の都市は無電柱化が当り前!

 そのような状況にもかかわらず、日本では、電柱・電線が路上に張り巡らされ、街の景観を損ねているばかりか、最近では、倒壊により交通を遮断する恐れがあることから防災面でも危惧されているところです。欧米はもとより、現在では、アジアなどの主要な都市でも無電柱化が進んでおり、日本の立ち遅れが顕著になってきています。

唯一、無電柱化推進法は某都知事の功績?

 そのような折、某都知事の成し得たことで、唯一、評価されるのは、無電柱化推進法を立案し、無電柱化推進条例を定めたことです。しかし、これを実現するには、ケーブルやトランスなど地上機器を設置するために歩道や公有地の確保が必要となりますが、先に述べたように歩道のない狭い道路ばかりで、困難を極めることは目に見えています。

「壁面後退」と「敷地の最低限度」は、最低限の規制!

 そこで、私が、提案するのは、せめて、1~2mの壁面後退を法制化し、そのスペースを活用して、地上機器などの設置を可能とする方策が必要不可欠ではないかと考えています。そのためには、敷地の最低限度も導入し、敷地にある程度のゆとりを持たせ、狭小敷地化に歯止めをかけなくてはなりません。

 そうすれば、無電柱化が推進するばかりでなく、現道の幅員でも通行環境が改善され、環境面でも防災面でも効果があると思いますが、如何でしょうか?

2017/11/20

日本の心配事(2)

切り刻まれる国土

 最近,首都圏において特に目立つようになりましたが,狭い土地が分筆され,軒を連ねるように2棟,3棟・・・と住宅が連なって建てられたり,少し広い事業跡地などでは,袋小路の私道を挟んで6棟~10棟と密集住宅地が造られたりしています。所謂,ミニ開発と呼ばれるものです。

 その原因は,高騰化した土地価格のために,相続税を賄うためであったり,収益性からであったりと,そのほとんどが経済的理由からです。しかし,根本的な原因は、日本に真の土地利用計画,法律(国土利用計画法,都市計画法,建築基準法等)がないからです。現在の法律では,外国からも揶揄されているように,ほとんど野放しに等しく,市場(経済)任せ,成り行き任せとなっています。将来の国土の姿(グランドデザイン)などとても描けない状態です。

3階建住宅狭小敷地に拍車

 また,1987年の建築基準法の改正に伴い,準防火地域での木造3階建住宅が解禁されたことで,より狭小敷地に拍車をかけることにもなりました。その理由は,3階建は2階建に比べて,同じ床面積を確保するのに最低限必要な敷地が狭く(狭小敷地)て済み,サラリーマンでも手の届く住宅価格になるからです。テレビで持て囃しているところの「狭小建築物」もこの類いです。

その結果,土地の狭小化はどんどん進み,1筆の土地が2つ,3つ,4つ・・・と,建築可能な極限にまで分筆され,それぞれ目一杯に住宅が建てられているのが現実てす。

狭小敷地
<狭い土地を2分割! 1棟⇒2棟へ建築中>

都心部の再開発には多額の国税投下

 その一方で,都心部を中心に,多額の国税を注ぎ込み,土地の集約化と高度利用を目的に,市街地再開発事業などが施行されており,超高層ビルが此処彼処と建てられているのも現実です。

日本の土地利用計画は「頭隠して尻隠さず」

 つまり,日々,土地の狭小化がどんどん進む一方で,再開発事業なとにより土地の集約化も同時に進行しているというのが日本の現状なのです。日本の土地利用計画は,「頭隠して尻隠さず」と,いう訳です。

日本の国策は,税収UPが最優先課題

 国としては,住宅産業,不動産業が活発になり,税収がUPすることから推進している政策なのです。つまり,経済が良くなり,税収さえ増えれば,「国土など,どうなろうとも知ったことではない」と言わんばかりの姿勢で,不作為以外の何ものでもないのです。観光立国と言うには程遠い土地利用計画であるということを認識すべきなのです。

真の「国土づくり,都市づくり,まちづくり」へ施策を転換!

 しかし,このままでは,「安全・安心な都市づくり」,「地震・災害に強いまちづくり」,「都市景観の向上」などに,全く逆行することになります。木造3階建住宅は,防火規制が多少付加されていますが,火災や地震に強い訳ではありません。震災復興とともに,真の「国土づくり,都市づくり,まちづくり」のための土地利用計画に,今すぐに転換しなければ,この国は取り返しのつかないことになることだけは明白です!

2017/09/10

「特区」って、本当に構造改革・・・?

「特区」にもいろいろ

 現在、特区(特定区域)と呼ばれているものは4種類あります。小泉内閣時代に、都市再生特区(2002年)と構造改革特区(2002年)が誕生しました。都市再生特区に認定されると、その再開発プロジェクト等に対して、規制緩和・税制優遇・金融支援が付与されます。構造改革特区は、自治体に対して、個別分野の規制緩和のみが付与されます。

 その後、総合特区(2011年)が制定され、自治体から提案された事業計画に対して、規制緩和・税制優遇・金融支援が付与されます。これには、国際戦略総合特区と地域活性化総合特区とがあります。

 そして、加計学園問題でも有名になった国家戦略特区(2013年)です。自治体や民間企業から提案された事業計画に対して、規制緩和・税制優遇・金融支援が付与される制度です。

 違いがよくわからないですね!こんなに「特区」って必要かって感じです。少しづつ趣旨とか制度とか異なっているとは思いますが、基本的には、時の内閣が現行の法律を反故にして、特定の事業をスピーディーに推し進めようというものです。建前は、「規制で守られた業界に風穴を開けるためだ」とも言われています。

「特区」の価値があるのか疑問?

 建前は至極もっともですが、その計画が、本当に国のために必要か?閉ざされた業界に一矢を報いることになるのか?一部の政治家・官僚・企業の利益が優先されているのではないか?・・・疑問の余地が残ります。何故なら、加計学園の獣医学部新設問題をはじめとして、とても特区に指定するほど価値のある計画とは思えないからです。

乱立した超高層ビルは、魅力のない都市に!

 私の専門分野の都市計画においても、容積率は、法律上1,300%が上限となっていますが、「特区」により、大都市では、最高で2,000%にも緩和されています。その結果、筍のように超高層ビルが乱立し、国際都市どころか、一層、無計画で魅力のない都市になっています。外国からの観光客が増加しているのは、世界的に富裕層が増加していることが要因であって、日本の都市や観光地に魅力があるからではありません。誤った思い違いや過信は禁物です。観光客が増加しているのは世界的な傾向です。

「特区」は危険な都市づくり?

 まして、直下型大地震が発生したら、長周期パルスにより、乱立した超高層ビルが倒壊するなど、とても想像もできないような大惨事になる可能性があります。これが、地震という宿命を背負った日本の安全・安心な都市づくりなのでしょうか?

「特区」よりも、抜本的な構造改革を!

 このような「特区」に頼るのではなく、この国の将来にとって望ましい国のグランドデザインを国民とともに考案し、それに向けて法律や政策を改定すべきではないでしょうか。別の見方をするならば、「特区は、政治家、官僚の怠慢、不作為の隠れ蓑である」と言わざるを得ません。

2017/08/21

スーパーゼネコンTS建設に何が起きているのか?

この1年に起きた重大事故・事件

(1)福岡市市営地下鉄七隈(ななくま)線延伸工事中の道路陥没事故 施工:TS建設代表共同企業体(JV) (2016/11/8)

 福岡市のJR博多駅前、市営地下鉄七隈線の建設現場で起きた道路陥没事故、JR博多駅前の市道2カ所が縦約10メートル、横約15メートルにわたって陥没し、穴は徐々に広がり、計5車線の道幅いっぱいの約30メートル四方、深さ約15メートルになった。穴には水が激しく流れ込んでいて穴がさらに広がる可能性があり、周辺のビル10棟に避難勧告が出たほどの大事故となった。

(2)渋谷駅再開発現場の鉄骨倒壊事故 施工:TK・TS建設共同企業体(JV) (2017/6/19)

 渋谷駅東口の再開発事業工事現場で鉄骨が倒れ、歩道との間を区切るフェンスの上に寄りかかったが、幸いけが人は出なかった。倒れた鉄骨付近から、縦2メートル、横1メートルほどの鉄板が歩道に落ちるなど、一歩間違えると大事故になりかねなかった。

(3)新国立競技場建設現場下請け現場監督の過労死(自殺) 施工:TS建設 (2017/4月)

 新国立競技場地盤改良工事の現場監督として従事していた23歳大卒1年の青年が、3月2日に失踪し、その後、4月に長野県で遺体で発見された。工事現場のセキュリティ記録などから、失踪する前の1カ月間は211時間56分の残業が認められた。遺書には「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」とあった。

 この現場は、私のブログにも書いていますが、国の不手際により、デザインが突如変更(再設計)となったことが原因で、如何に工期内に完工させるか、全く予断の許さない状況です。

(4)東京丸の内工事現場作業員3人転落事故死 施工:TS建設 (2017/8/11)

 東京都千代田区丸の内の「東京会館」ビル建替え工事現場で、男性作業員3人が相次いで地上から地下3階に転落した。足場の鉄板が突然外れて約25メートル下に転落したとのことで、40代の作業員2人と50代の作業員の計3人が全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡した。

原因は仕事の取り過ぎ?人員不足?管理能力の低下?

 これらの事故 ・事件は、この一年以内に起きたもので、重大ニュースともなりましたが、スーパーゼネコンの中でも、TS建設の現場で突出して多いのは偶然でしょうか?

 最近、都内を歩いていても、TS建設の現場の多さには眼を見張るものがあります。仕事の取り過ぎではないかと心配にさえなります。そのため、現場の人員不足が深刻になっているとも聞きます。オリンピック景気のため、今は仕事が多いが、将来を見据えると簡単には人を増やせないし、3K(きつい、危険、きたない)の建設業界に就職する若者も少ない等々、色々な理由があるようです。

 しかし、私が現場事務所で監理を行なっていた昭和の終わり頃と比べて、明らかに現場を知らない、現場を見ない管理者が増えているように感じます。パソコンに向かってデスクワークばかりしているように見えます。

 建設業界においても、ITの登場により図面等の作業効率や精度は格段に進歩しましたが(感性や美的センスは逆に低下したかも?)、逆に、デスクワークが膨大になって、現場に居ながら現場を見ないで、資料づくりや工程会議等に追われているように思います。先ずは、デスクワークの前に、もっと現場を見て、現場を覚えて、現場を身に付けて、より一層、品質管理と安全管理に努めてもらいたいものです。

2017/08/13

豊洲市場騒動は、一体、何だったのか!

結局、地下の土間をコンクリ―トで覆うだけ!

 あれだけ世間を騒がせた豊洲市場騒動は、一体、何だったのか?都民、国民は理解しているのだろうか?都知事が、騒ぐだけ騒いで、ほとんど利益のないまま、税金と時間だけが無駄に費やされました。

 結局、都知事が行ったことは、地下に流入する雨水を遮断するため、土間をコンクリートで覆うことくらいで、土壌汚染対策は基本的に何ら変わっていません。私も最初から、何故、床を造らなかったのか疑問に思っていましたが・・・。

 現在、土壌汚染対策として有効な方法は、①汚染された土壌を全て入れ替える ②汚染された地下水が地表や周辺の土地に流出しないよう遮断する(封じ込める)ことしか基本的にありません。豊洲の場合は、②を選択した訳ですから、地下水を調査すれば、汚染物質が検出されのは当然のことです。そのことを問題視し、ここまで移転を延期してきた訳です。

都知事の本当の目的は何だったのか?都議会の主導権争い?

 元石原都知事時代に、東京ガスから、ひどく汚染されていることを十分に知りながら、高額の土地代を払い、本来、土壌汚染対策費は売主が負担すべきところを、何故か都が負担していることから、そこに何らかの不正があると疑念を持ち、元石原都知事一派を追い詰め、都議会の主導権を奪おうとの狙いがあったのではないかと思います。

都に築地の再開発ができるのか?

 しかし、追及しきれずに、移転の延期に伴う多額の補償費と多額の管理費のみが残りました。ただし、都知事の賢いところは、落としどころに、築地の再開発を加えてきたことです。築地の土地は売却するものと思っていた多くの関係者を驚かせ、何となく、築地も豊洲も活かせるのではないかという空気を醸成し、自分への批判をかわしました。それ故、都知事率いる「都民ファースト」が、都議選でも大勝利を収めたことは記憶に新しいところです。

 本当に、都に築地の再開発など行う能力が存在するのでしょうか?今回の、一連の都の職員の対応を見ていても、とても、ガバナンスが整っているとは思えません。また、第三セクターなどを見ていても、都に経営能力があるとも思えません。都は、単なる地主でいた方が良いのでは?一切の計画・運営は民間に任せるべきではないしょうか?

今後とも築地に注目を!
 
 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、必須とされている環状2号線の整備が、暫定ですら間に合うかどうかという大きな問題となっていますが、そこには、築地市場の解体時期が重大な影響を及ぼします。間に合わせるためを理由に、これまでと同様、問題の本質がすげ替えられ、今度は、築地が豊洲に化けるのではないかと不安に感じます。都民は勿論、東京で生活する我々としても、今後とも、築地から目が離せられません。

2017/07/01

変わる墓地と建築設計

 日本の国土は変わりませんが、墓地は拡張の一途を辿っております。全国にある墓地の面積は、東京都と同じくらいの広大なものと言われています。一方、核家族化が進んだためか、墓参のいない荒れ果てたお墓が全国で散見されるようになり、大きな社会問題ともなっています。

 そんな中、日経電子版(NIKKEI STYLE)に、「散骨への高まる認知度、薄れる抵抗感」というタイトルで、次のような記事が掲載されていました。

 「墓地埋葬等に関する住民の意識調査」(厚生労働科学特別研究事業)によれば、散骨の認知度について、全体の9割近くが知っているという結果になった。また、楽天リサーチが20~60代の男女1000人に、自身の埋葬方法の希望を聞いたところ、散骨は16.6%と、「先祖代々のお墓」(29.5%)に次いで多く、「自分や家族らが新しく用意するお墓」や「永代供養墓」を上回った。」

 この記事を読んで、散骨希望者でもある私にとっても、期待の膨らむ思いですが、散骨は、現時点においては、刑法上の「遺骨遺棄」などの法的な整理や、信頼できる散骨事業者の育成、粉骨の方法、散骨可能な場所(海・川・山など)あるいは禁止場所の指定、散骨を禁止している一部自治体における条例改正など、まだ数多くの課題を抱えています。これらに対して、国・自治体・事業者・国民が一体となって取り組んで行く必要があると思っています。

 また、日経ビジネスには、「JR新宿駅から電車に揺られて1時間。横浜線片倉駅に降り立って、多摩丘陵の森の中を10分ほど歩くと、視界が急に開ける。「風の丘 樹木葬墓地」。これまで全く見たことがない墓地の姿が、視線の先にあった。」という記事が掲載されていました。

 この芝生と池に覆われた公園のようなお墓は、墓石は一つもないそうです。骨壷が眠るのは芝生の下で、35cm角の区画が割り当てられ、その個別区画に骨壷を埋葬する仕組みだそうです。この芝生の丘が、一つの大きな墓というわけです。芝生の下に骨壷を埋葬する期間は13年か33年で、先祖代々の墓のように骨壷が半永久的に残るのではなく、期間が来たら、その区画から骨壷を取り出し、芝生の別のエリアに設けた合葬墓に移して安置するそうです。

 新しいのは空間だけではなく、この墓地では、水盤を設けた献花台に、花弁だけを切り取って浮かべるのがこの墓地の献花の仕組みだそうです。浮かべた花弁を前に手を合わせ、丘全体にお参りをするという、これまでとは全く異なった斬新な墓地の姿が想像できます。

 この墓地の設計者は一級建築士の女性だそうです。彼女はこれまでにもいくつもの墓地のプロジェクトを手掛けており、そのほとんどにおいて、これまでと比べ物にならないほど人気が高いそうです。建築家が墓地の設計をするなど、これまでの常識では考えられませんでしたが、そこに彼女なりの活路を見出したのではないかという気がします。

 何故、活路かというと、現在の日本の建築設計業界は、バブル期までのように建築デザインが優先された時代は終わり、容積率を緩和された大規模な超高層ビルが中心で、それをこなせる大手建築事務所とスーパーゼネコンに仕事が集中する構造となっています。アトリエ派と言われた建築家たちがデザインを競ったのはひと昔前のことで、今ではほとんど見られなくなりました。彼女が、墓地設計に建築家としての感性を投じたのは、そんな時代背景もあり、そこに活路を見出したのではないかという気がするからです。

 しかし、アトリエ派の建築士たちが活躍していた時代を活きてきた私としては、一抹の淋しさを覚えます。将来、建築界のノーベル賞とも言われる「プリツカー賞」に選ばれるような日本人建築家は、残念ながら、もう出ないかも?

2017/04/09

日本の都市計画は経済政策?

「乱立する超高層ビル」に懸念

 不景気が20年以上もつづいている我が国ですが、三大都市圏では、いつの間にやら、あちらこちらで無計画に超高層ビルが乱立しています。

 日本の都市計画では、容積率は、最も高い商業地域でも600%~800%程度ですが、公共用地の提供や歩道状空地を設けるなどの地域貢献と引き換えに、1300%以上(最高1700%が許可されています)という容積率がボーナスとして行政から与えられる都市計画制度があります。

 「道路が広がり、歩行空間や公共広場が整備されるから」というのがその理由です。一方、民間は、床面積が通常の1.5~2倍のビルが建てられるのであればこの程度の投資は惜しみません。そのため、高さ100m以上の超高層ビルがあちらこちらで無計画に建築されているのです。

 また、法定再開発事業となると、さらに国庫補助も受けられるので事業収益は格段にUPし、資金力・人材力の豊富な大手不動産会社にとっては願ったり叶ったりということになります。

 つまり、行政としては、固定資産税など諸々の税収がUPし、民間事業者としては、事業規模・事業収益が拡大することから、相思相愛という訳です。

 しかし、超高層ビルの向かい側の木造密集地域などはそのままで、ピンポイントでの街づくりにしかなりません。しかも、至る所で認可されるため、雨後の筍のようにあちらこちらで乱立する状況となっています。

 あるテレビ番組で、某女性タレントが言っていましたが、「東京は衛生的できれいな街だけど、都市づくりに哲学が無いとある欧人に言われた。」と、私も、全くその通りだと思います。

 確かに、タバコの吸殻・ゴミ・落書きなどは随分減って街はきれいになったと感じますが、戦後の日本の都市計画は、民間の反発を恐れるあまり、現状をほとんどそのまま追認(現状追認型)しただけのもので、とても計画と言うにはほど遠いものです。都市計画道路でさえ大半が施行出来ない有り様です。

 そこへ、構造改革、都市再生の名の下、都市計画においても税収UPのための経済政策ばかりが目立ちます。元々の都市計画が貧弱な上に、経済優先の規制緩和を持ち込めば、どういうことになるか火を見るより明らかです。

 建築技術の進歩から、地震国日本においても超高層ビルが建築可能となりましたが、あるべきその都市のグランドデザインを描いた上で、都市計画で定めた特定の地区においてのみ超高層ビルを誘導することが必要ではないでしょうか。

 世界的にも超高層ビルの数・規模がその国の経済力のバロメーターとされたり、また、超高層ビル群がその国のシンボルともなったりする時代ですが、「乱立する超高層ビル」は、我が国だけの風景であり、異様な都市景観であるということを訴えたいのです。

2016/09/19

豊洲市場移転問題は新国立競技場・五輪エンブレム騒動と共通

豊洲市場移転問題は東京都だけの問題にあらず

 小池東京都知事が誕生するや否や、ご本人の意図はどこにあるかわかりませんが、豊洲市場移転問題など想像していた公共工事の負の部分がほんの少しだけ漏れ出たという印象です。

 今回の問題の発端は、「汚染された地下水が地表まで上昇していないか調査する最終の工程が平成29年1月と定められていたにもかかわらず、豊洲市場のオープンが平成28年11月と調査結果が公表される前となっている」という不手際からでした。

 しかし、900億円ほども費やした土壌汚染対策工事の仕様が、繰り返し行っていた都の汚染対策担当職員の説明と実際とで異なっていたことから、「これで食の安全が守られるのか」という疑念が一斉に沸き起こり、この移転計画そのものへの信頼が全く失墜してしまいました。と同時に、都に対する信頼も失われてしまいました。

 ですが、私には、開示された情報や図面等からは、現状の土壌汚染対策工事の工法に問題があるようには思えません。全ての敷地で盛土を行うよりは、むしろ、地下に点検・作業スペースを設けることは、将来において有益であり、建築の専門家であれば当然と受け止める方が多いと思います。ただし、現在、地下に滞留する水の流入経路やその排水方法については対策が必要だと当然に考えます。

 今回の騒動の根底にあるのは、恐らくこのような技術的・工法的なことではなく、国や都などの公官庁が、大規模公共工事を実施するだけの組織力や技術力・知見に欠けていることが最大の原因だと思います。しかも、自分達もそのような力量が無いことは百も承知の上で、権力を保持するため、誇示するために政治家と二人三脚でずっとそれぞれの業界を差配しつづけてきたことだと思います。残念ながら、一度手に入れた権力は自分からは手放さないのが人間です。

 しかし、現代のように目覚ましく科学技術の発展した社会では、異動の多い縦割り組織の行政機関が、大規模な公共工事を発注・管理することは最早不可能なのです。優秀な民間のプロジェクトマネージャーを登用し、一定の権限を移譲しなければ、今回のような問題や、先の新国立競技場などの問題が、またもや必ず発生すると思います。

 また、日本の役人は、明治維新からずっと上から目線のお上意識が続いているため、国民には建前論のみを展開するだけで、正直に全てを説明して、納得を得るという姿勢がありません。取りあえず形だけの説明をしておいて、その実、裏では自分達のやりたいように事を進めるのです。その点では、日本の官僚は世界一賢いと思います。そして、一般の国民は信用できない愚かなものと思っているようです。

 新国立競技場でも豊洲市場でもそうでしたが、予算などは低く押えたものを公表しておいて、事業が進んで来ると、いろいろと理屈をつけて、当初の1.5倍とか大幅な上積みをするという姑息とも言えるやり方をしているのです。「公共事業は始まったら止められない」を逆手に取っているのです。

 益々、日本の行政機関が国民に信頼されなくなっている最大の原因は、国民に対して正直であり、国民を根気よく説得するというサービス精神が無いからです。沖縄の米軍基地問題もしかり、全ての問題の原因がここに尽きると思います。

 その癖、外交では正面突破しかできず、したたかに立ち振る舞うことなどできないようで、拉致問題などは何十年経っても糸口すら見えて来ません。米軍との地位協定の見直しも同様の理由から改善できないのではないかと推測されます。「内政は正直に、外交はしたたかに」をモットーに出来ないものでしょうか。

 話が豊洲市場移転問題から少し逸れましたが、これから2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さらに、公共工事が高度成長期のときのように活況を呈して来ます。権力にしがみつくことなく、民間の組織力・技術力・知見を広く活用して、将来に禍根を残さない公共施設を創造してもらいたいと切に望みます。

2016/07/18

国立西洋美術館世界遺産登録決定

三度目の正直
 2016年7月17日 上野公園にある「国立西洋美術館」が、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されることが決定しました。フランスの建築家「ル・コルビュジエ」が欧州・アジアに跨る七か国に残した建築17点が一括して登録されるという初めてのケースであり、国立西洋美術館はその中の1点(1/17)ということです。

 しかし、登録が決定されるまでには15年もの紆余曲折がありました。今回(三度目)は、「ル・コルビュジエの功績により、20世紀最大の建築の潮流『モダンムーブメント』を通じた国際化による地球規模の文化が確立された。」という点を訴えて、やっと認められたというものです。フランスが中心となって提案してきましたが、今回の立役者の一人として、日本人の活躍もあったようです。

 「ル・コルビュジエ」は、スイス生まれのフランスの建築家で、合衆国の「フランク・ロイド・ライト」 ·ドイツの「 ミース・ファン・デル・ローエ」と共に、近代建築の三大巨匠と称されています。 また、コルビュジエは、「近代建築の五原則」というものを提唱しており、
1.ピロティ
2.屋上庭園
3.自由な平面
4.水平連続窓
5.自由な立面
というものです。
国立西洋美術館も同様にこれらの要素が取り入れられていますが、残念ながら、屋上庭園は現在立ち入り禁止となっています。

 丹下健三や安藤忠雄など日本の多くの著名な建築家は、ル・コルビュジエの建築の影響を100%受けていると言っても過言ではありません。

 今回の世界遺産登録について、多くの地元関係者は、地域活性化とか、上野の知名度向上とか、経済効果の点ばかりを喜び、強調されていますが、私は、それとは違って、このコルビュジエの遺作をいつまでも維持・継承しなければいけないという大きな義務と責任を世界に対して日本が背負ったことが良かったと思っています。
 
 それでなくても、その後の増築・改修工事によって、コルビュジエ独特の繊細なモダニズムが少し失われたようで、危惧しているからです。

2016/05/21

熊本・大分大震災に思うこと(3) ・・・今こそ、日本の木造住宅を見直すとき

<木造建築物と非木造建築物との違い>
 今回の熊本大震災において特筆する点は、木造建築物の「倒壊」あるいは「全壊」の多いことです。一方、非木造建築物(鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート・鉄骨造等)はというと、1981年(昭和56年)以前の「旧耐震設計」の建物においては被害が発生しているようですが、それ以降の「新耐震設計」による建物においてはほとんど被害がなかったようです。

 現行の 「建築基準法」では、「数回受けるであろう希な地震(震度5弱~強)においては建物の被害を防ぎ、数百年に一回程度発生する可能性のある極めて希な地震(震度6強~7)においては建物に被害は出るが倒壊には至らず人命を守ることを最低基準とする」としています。

<木造建築物は構造計算が不要>
 建築技術は、「経験工学」と言われていますように経験の上に成り立っています。耐震設計においても、過去の大震災を経験して、度々、改正されてきました。その成果として、構造計算の必要な非木造建築物では、宮城県沖地震後に改正された「新耐震設計」(1981年、昭和56年)がありますが、21年前の阪神淡路大震災や今回の熊本大震災の被災状況から、前述の最低基準が担保されていると思います。

 一方、建築確認申請において構造計算を要しない木造建築物では、阪神淡路大震災後に改正された「新耐震基準」(2000年、平成12年)となりますが、こちらの方では、比較的新しい建物においても、倒壊などの被害が多く発生しており、非常に、重要な問題だと思っています。

 「新耐震基準」により設計され木造建築物の構造計算をしてみると、最低基準を僅かにクリアする程度で、非木造建築物のように安全性に余裕がないという専門家の報告があります。従って、工務店やハウスメーカーなどの設計、施工の技術力とコンプライアンス次第では、最低基準を大きく下回るものが数多く存在することが容易に推察されます。つまり、「震度7でも倒壊しない」という最低基準を満たしていない木造建築物が、全国各地に相当数(棟)存在しているということです。

 全てのマイホームの建築主(購入者)に対して、経済的負担を強いられないとの思いから、社会的影響の小さい木造建築物については、構造計算が義務付けられていないのです。しかしながら、経済的に余裕があっても、自主的に構造計算を行い耐震性能を担保しようとする人は稀で、また、設計・施工それぞれにおいて第三者機関の認定が取得できる住宅性能表示制度というものが創設されましたが、それすら活用する人が僅かという状況です。

<木造建築物は耐震性が不明>
 その結果、日本においては、老朽化した建物も合わせると、現実的に耐震性の不明な木造建築物が数多く存在しており、一度、大地震が発生すると、熊本のように数多くの木造住宅が倒壊などの大被害を被ることになるのです。また、熊本では、地震に対する地域係数が0.8~0.9に指定されているため、1.0の関東などに比べてその分耐震基準が低いことも、被害の拡大につながったのではないかと思います。これについても、今後、見直さなければならない重要な問題です。

<1/2以上は耐震性が不明の木造住宅>
 なお、日本では、非木造建築物よりも木造建築物の方が圧倒的に多く存在しています。(H27年国土交通省調査)日本の建築物ストック統計によると、床面積55億3千万㎡が住宅、18億4千万㎡が非住宅となっており、住宅の床面積の割合は75%となっています。また、そのうち木造建築物の割合が67.5%となっていますので、日本の総床面積の50%以上が木造住宅とうことになります。つまり、「日本の建物の総床面積の1/2以上は、耐震性が不明の木造住宅」ということです。

<短命の木造住宅>
 一方、日本の木造住宅は、高度成長期以降、スクラップアンドビルドが主流となり、特に、木造住宅においては、20~30年の1世代限りの寿命があたりまえとなりました。コストを押えるため、「伝統的な木造建築」を簡略化した「在来工法」と呼ばれる軸組工法により簡易な住宅が数多く建てられてきたことに因ります。
 その上、建売住宅や住宅展示場の登場により、住宅の商品化(消費化)が進み、その傾向が一層顕在化してきました。また、仕上げについても、低コスト化のため、イミテーション(疑似)の安価な素材が多く使われるようになり、欧米人からは、「何故、日本人はイミテーションを好むのか」と不思議がられています。

<長寿命住宅のストック>
 近年、数年置きに、日本のどこかで、大震災が発生する現実を目の当たりにして、構造計算されていない、スクラップアンドビルドの木造住宅をこれ以上造り続けても良いものかと、不安になります。
 私は、「これからの木造住宅は、地震のほか、地球環境や省エネルギーにも十分配慮し、高耐震性と更新(リノベーション)性をあわせ持った長寿命住宅でなければならない」と思っています。「建てては壊す」のではなく、恒久的な住宅をストックしていかなければなりません。

<新しい木造住宅の創造>
 そのためには、木造建築物にも構造計算を義務付けるとともに、地震にも強い伝統的な木造建築の技術を取り入れるなど新たな工法を確立し、日本独自の、日本らしい恒久的な木造住宅を創り上げていくことが重要ではないかと考えます。なお、以前、ブログ内でツーバイフォー(枠組壁式工法)を推奨しましたが、設計・施工において耐震性のリスクが少ないことから、最適な工法の一つだと思います。日米欧の木造住宅が、長寿命・高耐震性・高品質等の高いレベルで競い合える時代が来てほしいものです。

<中古住宅市場の活性化>
 また、長寿命化のためには、中古住宅市場の活性化が欠かせません。「必要なくなれば売却し、買った人はリノベーションする」という循環型社会の構築が必要です。まして、生活の場を固定できない現代人は、住み替え可能な住宅が必要なのです。新築時のコストが割高になったとしても、資産価値は維持され、逆に経済的負担は少なくなると思います。

<今こそ、日本の木造住宅を見直すとき>
 現代の日本人は、多額の住宅ローンを抱え、消費にまわせるお金が少ないのが現実です。ローンを払い終わった頃には、住宅は寿命を迎えており、こんなに不経済で愚かなことに振り回されるのは終わりにするべきです。こんなことをやっているのは、世界中で日本人だけです。今こそ、日本の木造住宅を見直すときだと思います。