2016/09/19

豊洲市場移転問題は新国立競技場・五輪エンブレム騒動と共通

豊洲市場移転問題は東京都だけの問題にあらず

 小池東京都知事が誕生するや否や、ご本人の意図はどこにあるかわかりませんが、豊洲市場移転問題など想像していた公共工事の負の部分がほんの少しだけ漏れ出たという印象です。

 今回の問題の発端は、「汚染された地下水が地表まで上昇していないか調査する最終の工程が平成29年1月と定められていたにもかかわらず、豊洲市場のオープンが平成28年11月と調査結果が公表される前となっている」という不手際からでした。

 しかし、900億円ほども費やした土壌汚染対策工事の仕様が、繰り返し行っていた都の汚染対策担当職員の説明と実際とで異なっていたことから、「これで食の安全が守られるのか」という疑念が一斉に沸き起こり、この移転計画そのものへの信頼が全く失墜してしまいました。と同時に、都に対する信頼も失われてしまいました。

 ですが、私には、開示された情報や図面等からは、現状の土壌汚染対策工事の工法に問題があるようには思えません。全ての敷地で盛土を行うよりは、むしろ、地下に点検・作業スペースを設けることは、将来において有益であり、建築の専門家であれば当然と受け止める方が多いと思います。ただし、現在、地下に滞留する水の流入経路やその排水方法については対策が必要だと当然に考えます。

 今回の騒動の根底にあるのは、恐らくこのような技術的・工法的なことではなく、国や都などの公官庁が、大規模公共工事を実施するだけの組織力や技術力・知見に欠けていることが最大の原因だと思います。しかも、自分達もそのような力量が無いことは百も承知の上で、権力を保持するため、誇示するために政治家と二人三脚でずっとそれぞれの業界を差配しつづけてきたことだと思います。残念ながら、一度手に入れた権力は自分からは手放さないのが人間です。

 しかし、現代のように目覚ましく科学技術の発展した社会では、異動の多い縦割り組織の行政機関が、大規模な公共工事を発注・管理することは最早不可能なのです。優秀な民間のプロジェクトマネージャーを登用し、一定の権限を移譲しなければ、今回のような問題や、先の新国立競技場などの問題が、またもや必ず発生すると思います。

 また、日本の役人は、明治維新からずっと上から目線のお上意識が続いているため、国民には建前論のみを展開するだけで、正直に全てを説明して、納得を得るという姿勢がありません。取りあえず形だけの説明をしておいて、その実、裏では自分達のやりたいように事を進めるのです。その点では、日本の官僚は世界一賢いと思います。そして、一般の国民は信用できない愚かなものと思っているようです。

 新国立競技場でも豊洲市場でもそうでしたが、予算などは低く押えたものを公表しておいて、事業が進んで来ると、いろいろと理屈をつけて、当初の1.5倍とか大幅な上積みをするという姑息とも言えるやり方をしているのです。「公共事業は始まったら止められない」を逆手に取っているのです。

 益々、日本の行政機関が国民に信頼されなくなっている最大の原因は、国民に対して正直であり、国民を根気よく説得するというサービス精神が無いからです。沖縄の米軍基地問題もしかり、全ての問題の原因がここに尽きると思います。

 その癖、外交では正面突破しかできず、したたかに立ち振る舞うことなどできないようで、拉致問題などは何十年経っても糸口すら見えて来ません。米軍との地位協定の見直しも同様の理由から改善できないのではないかと推測されます。「内政は正直に、外交はしたたかに」をモットーに出来ないものでしょうか。

 話が豊洲市場移転問題から少し逸れましたが、これから2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さらに、公共工事が高度成長期のときのように活況を呈して来ます。権力にしがみつくことなく、民間の組織力・技術力・知見を広く活用して、将来に禍根を残さない公共施設を創造してもらいたいと切に望みます。

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