2016/04/24

熊本・大分大震災に思うこと (2)

 それにしても、今回の熊本・大分大震災では、倒壊やそれに近い木造住宅が多いように感じます。まだまだ予断を許さない状況ですが、これまでの映像から見えて来たことを綴りました。

<木造住宅と直下型地震>
 震源が10km付近と浅い(直下型地震)ことから、地震の周期は1秒程度とゆっくりです。この周期は、日本の木造住宅の固有周期とほぼ一致します。建物は、一見、微動だにしないように思われがちですが、実は、僅かながら揺れています。逆に、揺れることによって、風とか地震とかによる水平力に対抗しているのです(「ねばりがある」という言い方をします)。ちなみに、超高層ビルなどでは、固有周期が5秒以上と超ゆっくりですが、これは大地震の際に発生する長周期地震動と同じ周期です。そのため、震源地から遠く離れていてもその危険性が指摘されており、現在、対策が講じられているところです。

 映像から見る限りでは、多くの木造住宅が今回の直下型地震に共振し、倒壊にまで至ったのでないかと考えます。特に、歴史ある重厚な瓦屋根の旧家屋の倒壊が目立ちましたが、比較的新しい住宅も数多く見受けられました。勿論、震度7クラスの地震を経験すると相当なダメージを受けますので、その後の震度6強・7の地震に耐えられなかった家屋も多かったと思います。

<南阿蘇村アパートの倒壊>
 その中で、南阿蘇村にある東海大学の学生が多く住んでいた複数棟のアパートの倒壊については、一見、新しく見えましたが、「築40年を超す建物をリノベーションしている」との情報もあり、その改修工事が適切だったのか検証が待たれます。しかし、2階建て木造建築では、最低でも四隅に通し柱(1階から2階まで1本の継手のない柱)を設けますので、あのように1階部分が座屈を起こすことは考えられないです。まして、あの長辺方向の長さであれば中央にも通し柱があるはずですからなおさらです。普通は、全体が傾いて倒壊するはずですが、・・・?通し柱の2階床部分での断面欠損が大きかったのか、それを回避するため、あえて管柱にしたものの1階と2階の柱の接合補強金物が適切でなかったのか、いずれにしても今後の木造建築物の課題となりそうです。

<やはり、「ピロティ」は危険>
 また、都市部においては、阪神淡路のときと同様、ピロティの駐車場となっているマンションの1階部分が座屈していましたが、やはりという感じです。旧耐震設計(1981年以前の設計)で建築されたピロティ形式の建物は、鉄筋コンクリート造であれ、座屈する危険性が大です。

<設計地震力、耐震診断・耐震工事>
 建築基準法では、「地震が発生しやすい地域」と「相対的に発生しにくい地域」とに区分しており、「相対的に発生しにくい地域」では、設計地震力を0.9~0.7の範囲(指数)で低減して計算しても良いことになっています。熊本県では、県内全域が「相対的に発生しにくい地域」に該当しており、0.9ないし0.8に指定されています。ところが、その熊本県で大地震が発生しましたので、この指数は問題ではないか、今後、議論を呼びそうです。

 結局、日本中どこでも大地震は発生する恐れがあるのです。「自分の記憶にない」と言って、発生しない保証などありません。旧耐震設計の非木造建築物と、木造建築物は、是非とも耐震診断を受診されて、必要に応じて耐震工事を行っていただきたい。ほとんどの木造建築物は法的に構造計算をしなくても良いことになっていますので、念のため耐震診断を受けられることをお勧めします

<住宅性能表示制度の活用>
 これから木造住宅を建てられる方は、現代の在来工法(軸組工法)よりも、ツーバイフォー(壁式工法)をお勧めします。一般的に、ツーバイフォーの方が在来工法に比べて耐震性に優れていることは、設計上からも施工上からも確認されています。在来工法で建てる場合は、信頼のおける設計士(建築士)や工務店などに依頼することが安心かと思います。また、資金的には多少負担となりますが、住宅性能表示制度を活用すると、耐震性能などの等級(指標)を自ら確認できます。

※木造住宅の耐震性について、詳しくは、「続きを読む」に綴っていますので、よろしかったらご覧ください。

木造住宅の耐震性について

<木造住宅の確認申請>
 1)都市計画区域及び準都市計画区域内
  ・ほとんど確認申請が必要
 2)都市計画区域及び準都市計画区域外
  ・2階以下かつ延べ面積500㎡以下、建物高さ13m以下、軒高さ9m以下であれば不要

<木造住宅の構造計算>
 1)以下の建物(四号建築)は構造計算の義務なし
  ・2階以下かつ延べ面積500㎡以下、建物高さ13m以下、軒高さ9m以下
  ・安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること(所謂、仕様規定のこと)
   しかも、建築士が設計すれば壁量計算書や構造関係の図面を確認申請に添付不要
 (検査機関によっては、壁量計算書等の自主的な提出を求める場合がある)

<木造住宅の耐震性>
  ・全般的に、木造住宅の四号建築の仕様は構造計算したときよりも安全性が低い
  ・仕様規定通りに設計していても、実際に構造計算をすると安全率が下がる
    (これは設計上のことで、施工業者の技術レベルによって安全率が上下する)

<ツーバイフォー住宅>
  ・構造的な特性として、普通にプランニングをしていれば十分な耐震性が確保されている

<簡易構造計算>
  品確法(住宅の品質の確保に等に関する法律)による耐震等級では、構造計算のほか簡易構造計算も認められているが、あくまで簡易構造計算であり構造計算ではない。また、仕様規定による簡易計算を構造計算と誤解している住宅建設関係者が多いのも事実で注意が必要である。

<結論>
  建築確認が下りていても、必要最小限の基準について確認しているだけで、耐震性を保証をしているものではない。まして、確認申請も免除されているような建物は言うまでもない。木造2階建て住宅(四号建築)の安全性は、それを設計する建築士が責任を持っている。住宅を手掛けている設計事務所・ビルダー・工務店等は消費者に安全な住宅を提供する義務を負っていることを理解されたい。

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