2015/07/17

新国立競技場建替え騒動(2)

<ゼロベースでの白紙撤回>

 平成27年7月17日、安倍総理は、「新国立競技場の建替計画を白紙に戻す。改めてコンペ(国内)を実施し、2020年のオリンピックとパラリンピックには間に合わせる。但し、2019年のラグビーワールドカップには別の施設(日産スタジアム等)を検討する。」と、発表しました。この記者会見を聞いて、多くの一般国民は納得したようですが、皆さんは如何ですか?

 本当に、これで良かったのでしょうか?

 私は、臨海地区であれば、ザハ・ハディド案は面白いと思いましたが、外苑地区では、良好な景観と緑豊かな都市空間を壊すのではないかと危惧していました。

 しかし、ここまで事が進めば話しは違います。できる限りのコスト低減を図りつつ、この負の遺産となるであろう競技場を、後世の戒めとして、建設する事も止む無しと思っていました。「今さら、このデザインをキャンセルすれば、世界の建築家から日本は信用されなくなる。」との心配もありました。

 ただし、維持管理については、将来世代に負担をかけないよう、さらに知恵をしぼる必要があることは言う までもありません。

 その上で、不手際に対する第三者検証委員会を立ち上げ、しっかりとこの問題を検証し、全ての官僚・政治家に、その責任の度合に応じて、予算オーバーのお金を負担させ、今後の行政のあり方の道しるべとするべきと考えていました。

 ところが、メディアの推測通り、世論に反して安全保障関連法案を衆議院で強行裁決したことへの見返りに、同様に世論の風当たりの強かった「新国立競技場建替え計画」を白紙撤回にしたのだと思います。しかし、そんな政治の道具にされたのでは、これまで重ねてきた多くの技術者の苦労が水の泡です。同じ建築に関わる者として許せない気持ちです。 

 また、単に白紙に戻したからと言って、文科相や五輪相、日本スポーツ振興センター(JSC)にマネージメントする能力があるようにはとても思えません。ザハ・ハディドとの契約金(14億円)の問題や、これまでの基本・実施設計の契約金(40数億円)、ゼネコンとの工事契約の解除など初めから問題が山積しています。本当に良い競技場ができるのでしょうか?

 今回の騒動の最大の要因は、プロジェクトマネージャー(PM)が不在だったことだと思います。官僚やJSCにそのような人材がいるわけがなく、なぜプロポーザルでも行い、経験豊富な民間を登用しなかったのか?PMが居たならば、国際コンペでの内容や審査員の顔ぶれも変わっていたでしょう?コンペのレベルも上がっていたのではないでしょうか?

 文科省や五輪相、JSCのすべきことは、予算折衝と役所間の調整やパブリックコメントへの対応ではないでしょうか。税金を投入して建設される国立競技場は、国民の意見を反映したものでなければなりません。そして、将来において世界に誇れるものでなければなりません。

 せっかく、白紙に戻したのであれば、是非とも、優秀なPMを登用して、外苑の森に溶け込む、100年・200年と利用できる競技場を創ってほしい。できれば、公園法等を改正して、商業施設等恒常的に多くの国民が利用できる多目的施設にしていただきたい。既設の多くの競技場では、年間数十日しか競技やイベントが開催されず、施設一帯はさみしい限りで勿体無いと思うからです。

 今後とも、このプロジェクトからは目を離せません。

 
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