2015/05/03

マンション標準管理規約改定案が波紋を広げている理由(4)

<「価値割合」導入の先にあるものは?>

 民法では、「共有物の管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従いその過半数で決する」とあるように、議決権割合=持分価格となっています。
 ところが、区分所有法では、「規約に別段の定めがない限り、その有する専有部分の床面積の割合による」となっており、 議決権割合=専有面積が一般的となっています。民法と区分所有法で、議決権割合の基準が異なっているのです。

 これは、従来のマンションの多くは、部屋の位置などによって財産価値(㎡単価)にあまり差がなかったため、議決権割合は専有面積に応じて決められており、専有面積もほとんど差のないマンションなどでは、1議決/戸と均一にしているところもあります。

 ところが、この10年ほどの間に超高層マンションが数多く建築されるようになり、同一マンション内でも、眺望や日照などから高層階の財産価値(㎡単価)が低層階の数倍という物件が現われてきました。そのため、今回の報告書では、「専有面積割合」や「一住戸一議決」という従来の方式では円滑な合意形成の支障になるとの配慮から、「価値割合」による議決権の導入を選択肢の一つとするよう提言しています。

 しかし、戸建て住宅が中心の自治会や町内会などのコミュニティにおける合意形成では、住宅の「面積割合」や「価値割合」で議決権に格差を付けることはありません。1人1票、1世帯1票が原則です。ご近所付き合いなどコミュニティ活動の議決権にはやはり格差は付けにくいのではないでしょうか。

 そこで、国交省が今回の「コミュニティ活動条項」の削除にこだわる背景には、この議決権の「価値割合」方式を導入しやすい環境を整えたいとの配慮が働いているためで、「コミュニティ活動条項」がなくなれば、マンションを共有財産として経済合理性に基づいて管理しやすくなると考えているからではないでしょうか。

 将来は、「価値割合」方式がある程度普及してから、「マンションの資産評価の見直し」があるのではないかと、一部の不動産に詳しい専門家は推測しています。

 何故かというと、マンションの固定資産税の算定は、敷地を住戸数で均等に割って課税する仕組みとなっているほか、相続税の資産評価についても、敷地を専有面積で割って計算されますので、超高層マンションの高層階の固定資産税や相続税は、財産価値(㎡単価)が低層階と比較して数倍高くても、低層階とあまり変わらないという優遇税制となっているからです。つまり、超高層マンション高層部の高額物件は、財産価値が高い割りに、税の対象となる資産評価額はあまりにも低過ぎるのです。

 今年1月から相続税の基礎控除額が減額され、相続税の課税強化が図られましたが、相続税対策として富裕層を中心に人気なのが超高層マンション高層部の高額物件です。相続税対策の基本は相続税の対象となる財産の資産評価額をいかに圧縮するかですが、その対策として超高層マンション高層部の購入はうってつけなのです。物件によって圧縮効果は異なりまが、平均してマンション価格の半分に、中には3分の1に圧縮できたケースもあったようです。それが超高層マンション高層部が人気の秘密です。

 しかし、1000兆円を超す赤字を抱えているこの国が、金持ち優遇とも言えるマンションの相続税の資産評価基準をいつまでもこのままにしておくわけがありません。取れるところから取る、取りやすいところから取るのが国税当局ですから、手ぐすねを引いて待っているのではと憶測する専門家が多いわけです。

 この国は、都市計画や建築行政よりも全てにおいて経済政策が優先し、国のグランドデザインなど全く無視、大企業に地域貢献の名のもと1000%を超えるボーナス容積率を与えて超高層ビルをそこかしこと建設させ、経済の活性化と税収アップのみに神経を注いでいます。もし、前述の憶測が正しければ、ボーナス容積率で建てさせた超高層マンションから、さらに相続税の上積みを図ろうとしているわけです。

 本題に戻りますが、超高層マンションは、最上層階と下層階では価格が4~5倍違う物件も珍しくないようです。当然、所得格差のある居住者が同じマンションの住民となるわけですが、合意形成を図るのには無理があるとの声を聞きます。管理費・修繕積立金の金額も基本的に「専有面積割合」なので、高所得の居住者には問題ない金額でも、低所得の居住者には負担が重く、滞納問題が生じやすい原因とも言われています。もし大規模修繕工事で追加費用が必要になったとしても合意形成は容易ではありません。

 しかし、今回の報告書には、「議決権に価値割合を導入する場合でも管理費・修繕積立金の設定は、従来通りに専有面積割合で良い」という一文が入れられていますが、大規模修繕工事の費用を「価値割合」の議決権で決めて、各住戸の負担は「専有面積割合」というやり方で、本当に円滑なマンション管理ができるのでしょうか。

 今回のマンション標準管理規約の改定が及ぼす影響は、予想以上に各方面へと広がっていくことになりそうですが、私たちマンション管理士にも、重い宿題が与えられたと感じています。

<今回のマンション標準管理規約改定の主な内容>

①外部の専門家の活用など管理組合の業務体制・運営のあり方について
②総会の議決権割合等について
③マンション管理組合と自治会との関係、コミュニティ活動について

関連記事

コメント

非公開コメント