2018/08/09

平成30年建築基準法の一部改正について

平成30年6月改正建築基準法の公布

 最近の大規模火災をめぐる状況や防火関連の技術開発をめぐる状況等を踏まえ、①建築物・市街地の安全性の確保、②既存建築ストックの活用、③木造建築物の整備の推進の3点を主な改正の柱とする「建築基準法の一部を改正する法律」が、先の国会で成立し、6月27日に公布されました。その多くは、1年以内の施行となっていますので、政令や告示等は、これから制定されることになります。

 私は、7月23日に開催された「平成30年改正建築基準法に関する説明会(国交省担当官)」に出席してきましたので、今回は、その概要と私の意見を少しだけ綴りました。

① 建築物・市街地の安全性の確保

 平成28年12月に発生した「糸魚川市大規模火災」や平成29年2月の「埼玉県三芳町倉庫大規模火災」などによる甚大な被害の発生を踏まえ、建築物の適切な維持保全・改修等により、建築物の安全性の確保を図ることや、密集市街地の解消を進めることを目的に下記の事項が改正されたとのことでした。

〈改正内容〉
○維持保全計画作成対象建築物の範囲の拡大
これまで義務付けられていなかった大規模倉庫等にも、建築物を常時適法に維持するための維持保全計画の作成等を求める建築物の範囲を拡大。

既存不適格建築物への指導及び助言の追加・創設
 特定行政庁は、既存不適格建築物の所有者等に対して、これまでは、保安上必要な措置等をとることの勧告・命令は可能でしたが、予防的な観点から、建築物の適切な維持保全を促すための指導及び助言の仕組みを追加・創設。

上記2項目は、順当な改正だと思います。

○防火地域・準防火地域内における延焼防止性能の高い建築物の建蔽率の緩和 等
 防火地域・準防火地域内において、延焼防止性能の高い建築物の建蔽率を10%緩和。

建蔽率に10%を加えることができる建築物として以下の建築物を追加
 [1]防火地域(建蔽率80%未満)内にある耐火建築物と同等以上※1)の延焼防止性能を有する建築物
 [2]準防火地域内にある耐火建築物、準耐火建築物等

建蔽率を適用しない建築物として以下の建築物を追加
 [1]防火地域(建蔽率80%未満)内にある耐火建築物と同等以上※1)の延焼防止性能を有する建築物
 [2]準防火地域内にある耐火建築物、準耐火建築物等

 建蔽率の上積みには・・・?!

 この改正は、糸魚川市大規模火災の経験から、市街地にある防火性能の低い建築物の建替えを促進することが目的ですが、建蔽率の緩和(上積み)は、住宅地などの狭小敷地化・密集化を助長することになり、密集市街地の解消とは真逆の施策ではないかと思います。壁面後退や敷地の最低限度の導入とセットで建蔽率を上積みするのであれば理にかなっていますが、これでは、日本の市街地環境は悪化する一方で、地震対策としても、望ましくありません。

②既存建築ストックの活用

 空き家の総数は、この20年で1.8倍に増加しており、用途変更等による利活用を促進するため、また、活用に当たって、建築基準法に適合させるための大規模な工事を回避するため、下記の事項が改正されます。

〈改正内容〉
〇耐火建築物等としなければならない特殊建築物の対象の緩和
〇用途変更に伴って建築確認が必要となる規模の見直し(不要な規模の上限を100㎡から200㎡へ見直し) 等
 階数が3で延べ面積が200㎡未満の建築物を耐火建築物等としなければならない特殊建築物の対象から除くことで、戸建住宅等の空き家等を用途変更する際に、大規模な改修工事を不要とするとともに、手続を合理化し、既存ストックの利活用を促進。

 主に、3階建ての戸建住宅を児童福祉施設・商業施設等へ用途変更する場合に、「政令で定める技術的基準に従って警報設備を設けたものに限る」という条件付ながらハードルをぐっと下げるものです。

 これは、用途変更に限らず、都市計画区域外では、床面積が200㎡以下の新築・増築等は、確認申請の必要がない(4号建築物)ということになります。つまり、空き家を利活用して、グループホームや小規模児童福祉施設・民泊・店舗などへの用途変更が簡略化されることになると同時に、都市計画区域内でも、新築、増築等においても確認申請が簡略化されることになりますので、今後の展開が注目です。

空き家対策には、経済一辺倒ではなく、都市環境も考慮すべきでは!

 空き家は、安全面でも経済の面でも、いろいろな問題を抱えていますが、日本の場合は、欧米とは異なって、再利用に耐えられないような質の低い建物も多くあります。住宅から福祉施設等へ用途変更され、居住人口が増加し、一層過密で環境の良くない街になるのではないかと危惧されます。やはり、何でもかんでも利活用するのではなく、一定の良質な空き家を対象とするべきだと考えますが、如何でしょうか?

長屋又は共同住宅の各戸の界壁に関する規制緩和等(法30条)
 長屋又は共同住宅の天井の構造が、遮音性能に関して政令で定める技術的基準に適合する場合、各戸の界壁は、小屋裏又は天井裏に達しなくてもよいことになります。

 これは、民泊などへ用途変更する場合などの緩和措置ですが、 防火上主要な間仕切り壁については、すでに緩和されていましたので、所定の防音性能を有する天井も可とすることで、界壁を小屋裏まで到達させる必要がなくなります。つまり、空き家対策にも貢献することになります。


木造建築物等に係る制限の合理化

 必要な性能を有する木造建築物の整備の円滑化を通じて、木造に対する多様な消費者ニーズへの対応、地域資源を活用した地域振興を図ることが必要であることから、中層木造共同住宅など木造建築物の整備を推進するとともに、防火改修・建替え等を促進することを目的に以下の事項が改正されました。

〈改正内容〉
○耐火構造等とすべき木造建築物の対象を見直し(高さ13m・軒高9m超→高さ16m超・階数4以上)
 本改正で、耐火構造等としなくてもよい木造建築物が、3階建て(高さ16m)まで可能。

○上記の規制を受ける場合についても、木材のあらわし等の耐火構造以外の構造を可能とするよう基準を見直し
○防火地域・準防火地域内において高い延焼防止性能が求められる建築物についても、内部の壁・柱等において更なる木材利用が可能となるよう基準を見直し
 これまですべての壁・柱等が耐火構造を要求されていましたが、建築物全体の性能を総合的に評価することにより、耐火構造以外でも可能。(厚い木材による壁・柱等+消化措置の円滑化 など)
 防火・準防火地域の門・塀(2m超)は、不燃材料とすることとなっていますが、一定の範囲内で木材も利用可能。

耐力と防火性の高い積層木材の開発が課題!

 外国の木材価格の高騰により、日本の木材が利用できるようになったため、また、戦後植えた針葉樹の活用と森林保存を促進するため、日本の木材を見直そうということだと思います。新国立競技場に木材が多く使われるているのも同じ理由です。自然のままの木が一番良いですが、鉄よりも耐力があり、防火性の高い積層木材の開発に一層努めていただきたい。

④その他
〈改正内容〉
○老人ホーム等の共用廊下・階段について、容積率算定面積から除外
共同住宅から老人ホーム等への用途変更をしやすくし、既存ストックの利活用を促進するため、老人ホーム等の入所系福祉施設における共用廊下・階段について、共同住宅と同様に容積率の算定面積から除外されます。

〇「延焼のおそれのある部分」の定義の見直し
 「延焼のおそれのある部分」を一律2階以上は5mとしないで、火災の影響がある高さまでにする(外壁面と隣地境界線等との角度に応じて定める)というような緩和と考えられますが、詳細は政令・告示を見てからになります。

○仮設建築物・用途変更に関する緩和等
 興業場等の仮設建築物の存続期間を現行の1年から延長。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、仮設建築物がテストイベントやプレ大会時から本大会まで継続して設置され、1年を超えて存続する可能性があることから改正されました。

そのほか、
○用途規制の適用除外に係る手続の合理化
○接道規制の適用除外に係る手続の合理化
○接道規制を条例で付加できる建築物の対象の拡大
○特定防災街区整備地区内の建築物に関する規制の合理化 等

 久しぶりの大幅な改正となっています。大半は1年後の施行なので、今後とも、これから制定される政令・告示を注視して参りたいと思います。

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