2018/10/28

未来の東京のアイデンティティを考える

Innovative City Forum 2018」に参加

 森ビル(株)が運営する森美術館とアカデミーヒルズ(理事長:竹中平蔵)・(一財)森記念財団都市戦略研究所(所長:竹中平蔵)との主催による「都市とライフスタイルの未来を議論する国際会議 Innovative City Forum 2018」が、2018年10月18日から20日までの3日間六本木ヒルズで開催され、今年は、18日・19日のプログラムの一部に私は参加しました。
Innovative City Forum

東京は、ロンドン、ニューヨークに次いで世界第三位の都市?

 「Innovative City Forum(ICF)」は、「都市とライフスタイルの未来を描く」をテーマに2013年から毎年開催している国際会議です。国内外の科学者、研究者、技術者、アーティスト、デザイナー、企業経営者、ジャーナリストなどを招いて、科学技術の進展等による未来のライフスタイルや、その生活を支える都市の未来について過去5回にわたり開催されてきました。

 この会議に先立って、森記念財団の都市戦略研究所が5年前から始めている「世界の都市ランキング」が公表され、今年も東京は、ロンドン、ニューヨークに次いで総合評価では3位でした。これは、あくまで森記念財団の評価であって世界的なものではありませんが、違和感を覚える人も多いと思います。東京は、ゴミは少なく道路だけはきれいになりましたが、それ以外の点では、世界NO.3の都市とはとても思えません。特に、街並の景観では、数多くの都市に劣っていると思います。

 今回は、18日の夕方に行われた「東京のアイデンティティ:時間の連続性と想像力がもたらす未来の東京らしさ」を傍聴し、面白かったのでその内容について簡記しました。

2018森ビルFORUM

未来の東京のアイデンティティは・・・?

 司会は、テレビでお馴染みの竹中平蔵先生(小泉政権時、経済財政政策担当大臣)が務め、パネラーには、二人の大学教授、作家、建築家と日本人勢が並び、右端の席に、流暢な日本語を話す美術工藝社代表である外国人のデービッド・アトキンソン氏が講演も含めて座りました。

 竹中先生ほか日本人のパネラーは、都市東京(江戸)の歴史や成り立ち、伝統、文化、史跡(江戸城)、将来の都市東京の方向性(点から線へ)、現代和風建築などについて、いろいろな話しをされましたが、これと言って興味深い話しや切り口もなく、至極一般的な話しに終始しました。結局、東京タワーやスカイツリーは、パリのエッフェル塔・凱旋門やニューヨークの自由の女神には足元にも及ばず、未来の東京のアイデンティティ(東京らしさ)とはどういうものか、何だかよくわかりませんでした。

訪日外国人から見た日本は・・・?

 ところが、ただ一人外国人であるアトキンソン氏は、日本人のパネラーとは思考や発想が全く違っていて、私が日頃から「日本人のここがおかしい!日本のここが変だ」!」と思っていることを言い放ってくれたような感じがして、とても痛快で面白かった。特に、国や地方のインバウンド政策の見当違いや、私達日本人が普段何気なく思っている日本の姿と、訪日外国から見た日本の印象との違いについて、辛辣な語り口で面白く話されました。

 彼の言いたかったことを私なりに要約しました。

① この10年世界では、外国人旅行者の数が3倍以上に急増しており、日本のインバウンドが3倍になったとて自然の成り行きで、国の観光振興策が功を奏したとか、日本の魅力が向上したとは言い難い。
② 国は、インバウンドの調査において、訪日外国人からのみアンケートを行い、訪日しない外国人の意見は聞かないので、インバウンドを増やすためのアンケート調査になっていない。
③いくら歴史的意義のある史跡や文化があっても、その説明もなければ実体験もできなく、外国人は、日本人が思っているほど日本文化には感動していないし、感動できない。
④外国人が高い航空券と宿泊費を払って日本に来るのは、楽しいバカンスを過ごすためであって、日本の歴史や文化を知りたいとか、日本食を食べたいとか、日本文化とのふれあいだけを目的に来ているわけではない。その国の人々の暮らしぶりや心が癒され豊かになるような自然、体験型ツーリズムなどを求めているのである。(一部には、買物中心のインバウンドもいるが・・・)
⑤外国人は、WiHi、ATM、カード決済などの使えないような国(日本)は、技術先進国とは誰も思わない。

排他的な日本人!

 東京は、複雑な交通網や雑然とした街並みが多いので、日本人であっても首都圏以外の人は、戸惑うばかりの都市です。また、日本人の排他的な性質が根幹にあるためか、局外者に優しくない不親切な案内板(標識・MAP・サイン・案内放送など)が多いので、訪日外国人が快適に旅行できるとはとても思えません。
 日本の標識や案内板は、案内誘導することよりも設置すること自体が目的となっているものが多いように感じます。これは、私の感想です。

アイデンティティは、自然と宿るもの!

 結局、アイデンティティは、考えるものではなく、創造するものでもないと思います。そこで生活し、そこに滞在する全ての人が、居心地良く、優しく安全に暮らせる都市の創造であり、多様な価値観や文化を許容することのできる懐の深さが、アイデンティティとなり、多くの人の心の中に自然と宿るものではないでしょうか。
 フランスでは、4000万人の国民に対して、年間8000万人の旅行者が毎年訪れますが、訪仏外国人のために何か特別なことをしている訳ではありません。

2018/10/07

豊洲市場の問題は、土壌汚染?施設計画?床荷重?それとも、・・・?

2年間延期して、その成果は?

 東京都中央卸売市場の一つである築地市場は、2年前の11月に豊洲へ移転されることになっていましたが、小池知事の誕生により、土壌汚染と事業費の高騰を理由に凍結されていました。
 ここにきて、10月6日に築地を閉場し、11日からの豊洲開場に向けて大引っ越しが徹夜で行われています。連日、テレビでもその映像を盛んに放送していますが、「この2年間は何だったのか?」と、疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。そのとおりだと思います。実態は、何も変わっていません!

さらに煽るメディア!

 また、一部のメディア(専門家?)では、動線計画が悪いとか、床荷重が不足しているとか、やれ設計ミスだと今でも書き立てています。
 しかし、動線計画床荷重などに関することは、一部の市場関係者の意見を取り込んでいるだけで、専門的に調査したわけでもなく、少し煽り過ぎの感が否めません。

「さよなら築地」

設計に関する権限と責任の所在こそ問題!

 今回の問題では、ほかに根本的な原因があるのではないでしょうか?以前、問題となった新国立競技場のときもそうでしたが、公共施設の場合、設計業務に関する権限とその責任の所在が曖昧で、役割分担が国民に見えないことです。
 つまり、設計者に対して、誰が、どういう設計条件に基づいてその設計業務を委託し、誰が、設計図を承認したのか、その協議・プロセスを含めて国民に見えないことです。

建築設計には、誰もが理想とするものはない!

 建築の設計業務は、発注者から与えられた設計条件を基に、法規定を守ることは最低限の責務ですが、公共性・社会性・経済性のほか利用する側の人たちの意見にも配慮しながら、自分達の設計思想とデザインによって、エスキスから詳細へと設計図を描いていきます。
 したがって、十の意見を十取り入れるのではなくて、取捨選択と代替案を検討し、全体にバランスの取れた施設計画へと纏め上げまて行きます。しがって、発注者は、そのことをよく理解し、国民に説明する義務があるのです。

世界の建築家は、日本のコンペには、もう参加しないのでは!

 その設計に対して、設計者の思想を尊重しつつ、設計条件に基づいて完成度を判断し、設計承認をするのが発注者の責務です。その協議・プロセスを含めて権限の所在が曖昧なため、誰が設計を推進したのか?誰が最終的に承認したのか?誰に責任があるのか?全く曖昧模糊としているのです。(逆に一部の民間企業では、越権行為も甚だしいワンマン経営者が居て、デザインを滅茶苦茶にする場合もありますが・・・これも困ったものです。)
 「赤信号、みんなで渡れば怖くない!」を続けていては、生産性が上がるはずもなく、世界の建築家から見放されてしまいます。もうすでに、そうかも・・・!

行政は、アトリエ派事務所ともトラブル!

 新国立競技場豊洲市場は、大手の設計事務所でしたが、規模は小さいがデザイン力のある「アトリエ派」とよばれる設計事務所においても、行政のコンペで受賞しながら、首長の交代などにより、設計業務に関する訴訟が増えています。それでなくても、民間工事の設計は、現在、そのほとんどが大手事務所に集中しており、官民そろって「アトリエ派」設計事務所の仕事が無くなってしまいます。これでは、建築界のノーベル賞と言われる「「プリツカー賞」など、今後、日本人が受賞することなどできないのではと案じています。