2016/05/21

熊本・大分大震災に思うこと(3) ・・・今こそ、日本の木造住宅を見直すとき

<木造建築物と非木造建築物との違い>
 今回の熊本大震災において特筆する点は、木造建築物の「倒壊」あるいは「全壊」の多いことです。一方、非木造建築物(鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート・鉄骨造等)はというと、1981年(昭和56年)以前の「旧耐震設計」の建物においては被害が発生しているようですが、それ以降の「新耐震設計」による建物においてはほとんど被害がなかったようです。

 現行の 「建築基準法」では、「数回受けるであろう希な地震(震度5弱~強)においては建物の被害を防ぎ、数百年に一回程度発生する可能性のある極めて希な地震(震度6強~7)においては建物に被害は出るが倒壊には至らず人命を守ることを最低基準とする」としています。

<木造建築物は構造計算が不要>
 建築技術は、「経験工学」と言われていますように経験の上に成り立っています。耐震設計においても、過去の大震災を経験して、度々、改正されてきました。その成果として、構造計算の必要な非木造建築物では、宮城県沖地震後に改正された「新耐震設計」(1981年、昭和56年)がありますが、21年前の阪神淡路大震災や今回の熊本大震災の被災状況から、前述の最低基準が担保されていると思います。

 一方、建築確認申請において構造計算を要しない木造建築物では、阪神淡路大震災後に改正された「新耐震基準」(2000年、平成12年)となりますが、こちらの方では、比較的新しい建物においても、倒壊などの被害が多く発生しており、非常に、重要な問題だと思っています。

 「新耐震基準」により設計され木造建築物の構造計算をしてみると、最低基準を僅かにクリアする程度で、非木造建築物のように安全性に余裕がないという専門家の報告があります。従って、工務店やハウスメーカーなどの設計、施工の技術力とコンプライアンス次第では、最低基準を大きく下回るものが数多く存在することが容易に推察されます。つまり、「震度7でも倒壊しない」という最低基準を満たしていない木造建築物が、全国各地に相当数(棟)存在しているということです。

 全てのマイホームの建築主(購入者)に対して、経済的負担を強いられないとの思いから、社会的影響の小さい木造建築物については、構造計算が義務付けられていないのです。しかしながら、経済的に余裕があっても、自主的に構造計算を行い耐震性能を担保しようとする人は稀で、また、設計・施工それぞれにおいて第三者機関の認定が取得できる住宅性能表示制度というものが創設されましたが、それすら活用する人が僅かという状況です。

<木造建築物は耐震性が不明>
 その結果、日本においては、老朽化した建物も合わせると、現実的に耐震性の不明な木造建築物が数多く存在しており、一度、大地震が発生すると、熊本のように数多くの木造住宅が倒壊などの大被害を被ることになるのです。また、熊本では、地震に対する地域係数が0.8~0.9に指定されているため、1.0の関東などに比べてその分耐震基準が低いことも、被害の拡大につながったのではないかと思います。これについても、今後、見直さなければならない重要な問題です。

<1/2以上は耐震性が不明の木造住宅>
 なお、日本では、非木造建築物よりも木造建築物の方が圧倒的に多く存在しています。(H27年国土交通省調査)日本の建築物ストック統計によると、床面積55億3千万㎡が住宅、18億4千万㎡が非住宅となっており、住宅の床面積の割合は75%となっています。また、そのうち木造建築物の割合が67.5%となっていますので、日本の総床面積の50%以上が木造住宅とうことになります。つまり、「日本の建物の総床面積の1/2以上は、耐震性が不明の木造住宅」ということです。

<短命の木造住宅>
 一方、日本の木造住宅は、高度成長期以降、スクラップアンドビルドが主流となり、特に、木造住宅においては、20~30年の1世代限りの寿命があたりまえとなりました。コストを押えるため、「伝統的な木造建築」を簡略化した「在来工法」と呼ばれる軸組工法により簡易な住宅が数多く建てられてきたことに因ります。
 その上、建売住宅や住宅展示場の登場により、住宅の商品化(消費化)が進み、その傾向が一層顕在化してきました。また、仕上げについても、低コスト化のため、イミテーション(疑似)の安価な素材が多く使われるようになり、欧米人からは、「何故、日本人はイミテーションを好むのか」と不思議がられています。

<長寿命住宅のストック>
 近年、数年置きに、日本のどこかで、大震災が発生する現実を目の当たりにして、構造計算されていない、スクラップアンドビルドの木造住宅をこれ以上造り続けても良いものかと、不安になります。
 私は、「これからの木造住宅は、地震のほか、地球環境や省エネルギーにも十分配慮し、高耐震性と更新(リノベーション)性をあわせ持った長寿命住宅でなければならない」と思っています。「建てては壊す」のではなく、恒久的な住宅をストックしていかなければなりません。

<新しい木造住宅の創造>
 そのためには、木造建築物にも構造計算を義務付けるとともに、地震にも強い伝統的な木造建築の技術を取り入れるなど新たな工法を確立し、日本独自の、日本らしい恒久的な木造住宅を創り上げていくことが重要ではないかと考えます。なお、以前、ブログ内でツーバイフォー(枠組壁式工法)を推奨しましたが、設計・施工において耐震性のリスクが少ないことから、最適な工法の一つだと思います。日米欧の木造住宅が、長寿命・高耐震性・高品質等の高いレベルで競い合える時代が来てほしいものです。

<中古住宅市場の活性化>
 また、長寿命化のためには、中古住宅市場の活性化が欠かせません。「必要なくなれば売却し、買った人はリノベーションする」という循環型社会の構築が必要です。まして、生活の場を固定できない現代人は、住み替え可能な住宅が必要なのです。新築時のコストが割高になったとしても、資産価値は維持され、逆に経済的負担は少なくなると思います。

<今こそ、日本の木造住宅を見直すとき>
 現代の日本人は、多額の住宅ローンを抱え、消費にまわせるお金が少ないのが現実です。ローンを払い終わった頃には、住宅は寿命を迎えており、こんなに不経済で愚かなことに振り回されるのは終わりにするべきです。こんなことをやっているのは、世界中で日本人だけです。今こそ、日本の木造住宅を見直すときだと思います。