2015/10/25

横浜傾斜マンションから見える日本社会の歪

<横浜傾斜マンションの概要>

 三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市都筑区のマンションが傾斜した問題で、杭工事を請け負った旭化成建材が施工報告書のデータの一部を転用・加筆したことを、同社の親会社である旭化成が10月14日に明らかにしました。

 問題となっているマンションは、三井不動産レジデンシャルが2006年に販売した横浜市都筑区の「パークシティLaLa横浜」です。事業主は、三井不動産と明豊エンタープライズで、設計・施工は三井住友建設です。鉄筋コンクリート造の地上12階建ての4棟、住戸数は705戸の大型マンションです。

 杭工事は、三井住友建設(元請)から 日立ハイテクノロジーズ(下請)が請負って、旭建材(孫請)が施工したようですが、現場の施工管理者は、さらに下請から出向の社員が担当していたようです。三井住友建設は、1本目の杭の打ち込みには立ち会ったようですが、その後は、立ち会っていないようです。また、日立テクノロジーズに至っては、現場に居たことすら不明ですし、この会社は建設業の会社でしょうか?(ハイテクの製品・サービスを提供しているのでは?)

 横浜市によると、傾斜が判明したのは全4棟のうちの1棟で、外壁の水平目地を確認したところ、最大でマイナス2.4cmのずれがあったそうです。その後、ボーリング調査やラムサウンディング試験などを実施して支持地盤の位置を確認した結果、施工報告書に残っている杭長のデータと比較したところ、傾斜した棟の杭52本のうち6本が支持地盤に到達していないことが分かり、到達していても根入り不足の杭も2本あったとのことです。

 旭化成は、これまでの調査で、原因として考えられているのは旭化成建材の社員2人が杭打ちの際、地盤調査で支持地盤の位置の測定に失敗し、手元にあった別のデータを転用した可能性が高いと推測しています。

<推察される原因>

 一般的に、この種の事故は、一つのことが原因で起こることは希で、いろいろな要素が絡み合い、それらが重なりあって、最悪のとき、事故になるのではないかと思います。福島の原子力発電所の事故がそうであったように、何か一つでも危機に備えて対策を講じていれば、最悪の事故は防げたはずです。

 今回のトラブルは、真相がまだ明らかになっていませんが、現時点で想定し得る原因について推察しました。

①日本人の「お客様は、神様です。」の信仰心から、販売会社である発注者のハラスメントを助長し、無理な単価、工期を設計者や建設会社に押し付ける日本の悪しき慣習が、建築の質の低下を招いています。

②日本の建設業界の「多重下請のしくみ」が、施工管理を複雑にし、技術の継承を困難にしています。

③姉歯事件でもそうであったように、事件・事故が起きるたびに、法改正や制度改正により、設計担当者や現場管理者の作成する書類等が膨大になり、現場を知らない設計者や現場管理者が増えています。

④2006年に、低排土、高支持力杭工法として、今回使用された既成杭「ダイナウィング」が発売されたことから推察して、横浜のマンション建設時は、発売されたばかりで、現場管理者が機械の操作や施工手順に不慣れな状況にあったのでは・・・と想像します。

⑤マンション周辺の地形は、平坦に見えますが、支持地盤(マンションの重量を支えるに足りる固い地盤)はうねっており、傾斜の急なところで40°(スキー場のエキスパートコース並み)もあるため、近接のデータが参考にならない場合があります。

⑥前記のことから、規制杭は、現場で杭の長さ(杭長)を変更することは不可能なため、事前の適切な個所でのボーリング調査が重要ですが・・・どうだったのでしょうか?

⑦また、杭長(設計)と現場の支持地盤の深度が異なった場合、大幅な工期の延伸となる場合があります。

 いずれにしても、もう少し調査が進まないと、軽々に語れませんが、姉歯事件のような、悪質な事件ではないように感じます。マスコミは、705戸の区分所有者の悲哀と旭建材とその管理技術者(2人)の悪質性を対照的に取り上げて、ことさら国民の不安をあおるような報道の仕方をしていますが(最近、全ての事故・事件の報道で感じます。)、もう少し、日本社会の歪みを正すような、公平で公正なニュース、社会に貢献するニュースを心がけてもらいたいものです。