2012/04/07

スーパー「ライフ大倉山店」建築反対闘争記録(1)

<グレーの建築計画>
 
 平成24年3月、スーパー「ライフ大倉山店」は、横浜市の大倉山駅から徒歩10分ほどの住宅街にオープンしました。このスーパーの建築計画は、法の網を潜り抜けた、限りなくクロに近いグレーの計画だったと、今でも思っています。

  私たちマンション管理組合は、隣接するマンションと合同で、この建築計画の見直しを求めて、長期間反対闘争を展開しました。その中で、私は建築が専門でしたので、中心的な役割を果たさざるを得ませんでした。

 多くの住民の方が反対運動に参加されたおかげで、規模こそあまり縮小させることができませんでしたが、その他の要求は、ほぼ勝ち取ることができました。居住環境が悪化するのを最小限に止めることができたと自負しております。
 
 私は、建築士の端くれとして、このことをブログに書き記して置きたいと思い、PCに向かいました。

   ライフ大倉山店計画地周辺上空写真
 
 まず、ライフ大倉山店が出店した地域についてご紹介します。

<ライフ大倉山店の立地環境>

①学童や園児の通学路・お散歩コース
 ライフ大倉山店の周辺は閑静な住宅街で、近くには、「太尾小」・「大綱中」・「港北高校」など多くの学校があるほか、「アソカ幼稚園」や、最近では、「聖保育園」・「保育室わおわお」などの保育施設も増えており、周辺道路は、学童や園児の通学路・お散歩コースとなっています。

②狭い道路の多い地域
 また、周辺の道路は、4m未満の狭い道路が多く、大型店の出店には適さない交通環境となっています。(4m未満の道路は、建築基準法において、通称「2項道路」と呼ばれている暫定道路のことで、消防車が通行できません。)

③慢性的に渋滞するバス通り
 さらに、ライフ大倉山店がメインとする道路は、大倉山駅前通り(エルム通り・バス通り)で、幅員が6.5mと狭く、部分的にしか歩道がないため、慢性的に渋滞しているところです。
 
 このように、大型店の出店には適さない環境にもかかわらず、平成21年の夏に、「ライフ大倉山店建築計画」の最初の説明会がありました。その会場で、多くの住民の方が反対を表明したところ、ほどなく、突然、ライフコーポレーションより中断するとの知らせがありました。しかし、1年後の平成22年9月頃、再び、同じような建築計画の案内があり、断念したものと思っていた私たちをがっかりさせました。それは、床面積が4,000㎡を超える大型店舗と150台以上の駐車場を併設したものでした。

 当然、私たちマンション管理組合は、再び、建築計画の見直しを求めて、隣接マンションと合同の対策委員会を立ち上げました。

  このときから、ライフコーポレーションとの長い闘いが始まったのです。 


2012/04/06

スーパー「ライフ大倉山店」建築反対闘争記録(2)

<計画見直し要求の理由>

 私たち対策委員会が、ライフコーポレーションに対して、建築計画の見直しを要求したのは次の理由からでした。

1)歩行者等の事故が増加するのでは・・・
 周辺の道路は、来客の自転車や車の増加により、「子供たちが事故に巻き込まれるのではないか!」、「歩行者、特に高齢者や障害者が安心して歩けなくなるのではないか!」

 当初、来店車輌は、バス通りから入庫して、歩行者中心の生活道路へ出庫する計画でしたが、私たちが猛反対をすると、生活道路への出庫は、即、撤回しました。しかし、現状は、緊急車両用ゲートを解放すればいつでも生活道路の使用が可能な状態ですので、将来にわたって、注視していく必要があります。

2)生活環境が悪化 するのでは・・・
 「大型店舗の騒音や悪臭などで生活環境が悪化するのではないか!」あるいは、「大型店舗が事件事故等を誘発するのではないか!」

3)交通環境が悪化するのでは・・・
 これ以上交通量が増えると、慢性的に渋滞している大倉山駅前エルム通り(バス通り)の渋滞がもっと激しくなるのではないか!」、「バスの運行が難しくなるのではないか!」

 大倉山駅前
大倉山駅前エルム通り
 元山根酒店前
慢性的渋滞のバス通り 

2012/04/05

スーパー「ライフ大倉山店」建築反対闘争記録(3)

<建築関係法の検証>
 
 近くにスーパーができれば、近隣の住民、特に高齢者や障害者にとってはより便利になりますが、隣接している私たち住民にとっては、利便性よりも環境悪化の方がずっと心配だったのです。
 
 しかし、誰も、この建築計画の違法性についてまで指摘する人はいませんでした。私は建築の専門家として、感覚的に、このような規模の商業施設がこの地域に建てられるはずがないと思い、建築基準法(以下、建基法)や都市計画法横浜市建築基準条例(以下、市条例)等に基づいて、この建築計画の法的な検証を行いました。

 その結果、この敷地の用途制限と接道義務から、商業施設の場合は、床面積が500㎡までしか建てられないことを確認しました。「やはり!」という感じでした。

 その根拠は、

①計画敷地の用途地域は、第一種住居地域ですので、住宅の環境を守るため、店舗や飲食店などの商業施設は床面積が3,000㎡以下しか建てられす、大型店舗の建築を規制している地域です。※1)

②さらに、商業施設は、不特定多数の来客と交通が輻輳することから、また、緊急時の消火(救助)活動等を容易にするため、市条例において「敷地と道路の関係」が定めれています。それによると、この敷地の接道条件の場合、店舗は、床面積が500㎡以下(現計画の1/8)しか建てられません。※2)

※1)都市計画法 第9条 第5項/建築基準法 第48条 第5項)
 リンク:用途地域による建築物の用途制限を参照してください。

※2)横浜市建築基準条例 接道義務(第24条 百貨店等(物販店舗が含まれます。)の敷地と道路)
 床面積に応じて定められた巾の道路に、1箇所で敷地の外周の長さの1/7以上接していること、または、床面積に応じて定められた巾の2以上の道路に、敷地の外周の長さの1/3以上接し、かつ、1つの道路に1箇所で敷地の外周の1/6以上接していること。
  
  1敷地1建築物

 
2012/04/04

スーパー「ライフ大倉山店」建築反対闘争記録(4)

<法の盲点を突いた建築計画>

 建築関係法の検証(接道義務)から、本来、この敷地には、店舗(商業施設)は床面積が500㎡までしか建てられず、4,000㎡を超える大型商業施設は到底無理なのです。では、ライフは一体何をどうしようとしているのでしょうか?

  私も、段々本気になってきてライフの小さな図面をよくよく睨みました。すると、確保した敷地は約9,700㎡と広大であるにもかかわらず、わざわざ4分割し、その一つは平置き駐車場とし、残りの三つの敷地にそれぞれ1棟づつ建てようとしていることに気づきました。そして、次のようなカラクリがわかったのです。

 本来ならば、一体的に運営(専門的には、「用途上不可分の関係」と言います。)する複数の商業施設は、一つの建築物として建築確認を申請することが認められています。また、そうするのが一般的です。
 その理由は、敷地と建物を分割して個別に申請すると、お互いの敷地と建物が影響しあって法規制に抵触する場合がありますが、一体的に管理される施設であれば、法は、一つの建築物として取り扱っても、安全上問題がないと認めているからです。

 また逆に、一体的に運用する商業施設等の集客施設の場合は、一つの建築物として申請しなければ、この施設に必要な道路が確保されているかどうか正しい判断ができなくなります。集客施設においては、不特定多数の来場者があることから、交通が錯綜するのを回避するため、また、緊急時の避難経路や救助活動、消火活動のため、規模に応じて接する道路の幅員と長さが定められているからです。

 従って、ライフのように一体的に運用するにもかかわらず、建築基準法の「一敷地一建築物の原則※3)」を逆手に取って、個々に確認申請が出されると、施設規模に応じて規制している接道義務が無視されることになります。そして、交通環境や緊急時の安全が確保されていないにもかかわらず、建築確認が下りてしまうのです。ですから、このやり方は法の盲点を突いたものであり、法の精神を無視した自己中心的な計画と言わざるを得ないのです。

 しかも、接道条件をクリアするために、埋もれていたまぼろしの私道(建基法42条1項3号※4))まで接道として復活させるなど、個々の施設とした場合においても危うい計画なのです。また、横浜市よりも厳正な東京都の条例(接道条件)では、この方法を用いても建てられないほど、道路環境が整っていない地域に無理やり出店しようとする計画なのです。専門家として、ここまでやらなければならなかった設計者のことを考えると、やりきれない複雑な気持ちになりました。

※3)「一敷地一建築物の原則」については、後の「つづき」に詳しく書いていますのでご覧ください。これらの建築関係法は、専門家でも難しいところです。
※4)建築基準法 第42条 第1項 第3号⇒建築基準法施行時(昭和25年)に存在していた幅員4m以上の道路(私道)を、建基法上の道路に指定
 
 ライフ計画図3敷地3建築物(可-不可)2

 

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2012/04/03

スーパー「ライフ大倉山店」建築反対闘争記録(5)

<拒否された要求>
 
 私は、ライフ大倉山店の建築計画が如何にグレーであるか、資料を作成して対策委員会の皆さんに説明しました。非常に専門的で難解でしたので、どれだけの方が理解されたかわかりませんが、ライフ大倉山店の建築計画が法の盲点を突いたものであり、コンプライアンス上問題があることがわかりましたので、反対運動は水を得た魚のように俄然活気づきました。私たち対策委員会は、説明会や単独協議の場などで、再三再四、ライフコーポレーションに対してこの点についても指摘し、見直しを要求しましたが、ライフは一切応じようとしませんでした。

 そこで、ライフコーポレーションと大株主である三菱商事宛に、「交通および生活環境の悪化防止と建築関係法の遵守」を求めて意見書を送りましたが、どちらも、「法令遵守で進めてまいります。」と事務的な回答で要求には応じようとしませんした。(中断する前にも両社に意見書を送りましたが、同様の回答でした。)

<横浜市の斡旋>

 そのため、私たち対策委員会は、横浜市中高層建築物条例に基づいて、横浜市建築局中高層調整課に「あっせん」を依頼し、横浜市を仲介に、ライフコーポレーションと協議を行うことにしました。

 私たち対策員会とライフコーポレーションは、平成22年12月3日に2時間以上に及ぶ「あっせん」協議を行いました。ライフは、オープン当初の誘導員の配置や屋上駐車場の使用時間の短縮などソフト面(運用面)での要求には応じましたが、規模の縮小については、見解の相違を理由に頑なに最後まで拒否しました。横浜市も、私たちの言い分を認めながら、踏み込んだ指導までは立場上できないとのことで、期待はずれに終わりました。

 協議の中で、私たち対策委員会から、「福利厚生施設や(当時、横浜市は待機児童が全国一であったことから)保育所をテナントとして誘致することなどが、ライフが掲げている地域貢献型企業の本来の姿ではないのか」とライフに意見をしました。そのときは、何の反応もないまま協議は終了しました。

2012/04/02

スーパー「ライフ大倉山店」建築反対闘争記録(6)

<ライフからの回答>
 
 ライフと横浜市仲介の「あっせん」協議を行なってから一週間後、ライフコーポレーションから私たち対策委員会宛に、次のような変更案の提示がありました。

 それは、「衣料棟を医療モールに変更し、クリニックとドラッグストアをテナントとして誘致するほか調剤薬局も併設する。」また、「事務所棟には保育施設も誘致する。」というものでした。

  ライフ大倉山店変更案

<覚書締結>

 この変更案は、横浜市の「あっせん協議」において、私たちから訴えた意見を取り入れたもので評価に値しましたが、規模の縮小において納得のいくものではありませんでした。しかし、建築審査会※5)へ訴えるとなると、弁護士費用や時間もかかることから、対策委員会を幾度となく開催し、協議を重ねました。(横浜市から、私が建築審査会に訴えてくれれば、法改正がやりやすくなると進言されていましたが・・・)
 
 熟慮の結果、スーパーの出店により、近隣住民の利便性が向上することに鑑み、 交通や隣接する私たちマンションへの影響を最小限に止める方策を検討し、それをライフに確実に実行させることを条件として出店を認めようという結論に至りました。

 そして、私が、建築の専門家としてその方策を検討し、それを下記のような覚書として取りまとめ、ライフコーポレーションに突き付けました。
 
 その結果、すんなり、ライフコーポレーションは覚書の内容を全て受け入れ、私たち合同の管理組合と調印を交わすことになりました。(恐らく、後ろめたさがあったから受け入れたものと推測します。)

※5)建築審査会
建築指導事務の公正な運営を図るため、建築基準法第78条第1項の規定に基づき、市の附属機関として設置されているものです。

<主な覚書の内容>

 1.緊急車両を除いて、入出庫はバス通り側のみとし、生活道路は使用しない
 2.道路境界から4m以上壁面を後退させ(当初の計画は60㎝でした。)、適切な道路(公共)空間を確保する
 3.屋上室外機及び排気口の設置場所を制限し、騒音や悪臭を抑制する
 4.屋上駐車場の目隠しフェンスの設置と利用時間を制限し、ヘッドライトの光害や来客の視線を遮断する
 5.防犯カメラの設置と時間外侵入防止の措置により、事件事故等を抑止する
 6.横浜市と防災協定を締結し、災害時に地域貢献を実施する
 7.都市型水害に備えて、水害対策(透水性アスファルト等)の措置を講じる
 8.渋滞対策として、チラシの配布や交通整理員を配置し、車の来店ルートを誘導をする
 9.町会へ入会し、地域との交流を深める
10.応分の期間、私たち管理組合と定期的に協議を行う ほか

 残念ながら、店舗面積についてはほぼ同規模で妥協せざるを得ませんでしたが、4mの壁面後退や屋上駐車場の目隠しフェンスの設置など多岐にわたって要求が通ったことは、反対運動の成果だったと思います。交通や環境の悪化を最小限に止めることができたのではないかと自負しています。

2012/04/01

スーパー「ライフ大倉山店」建築反対闘争記録(7)

<開店はしましたが・・・>

 開店後も、覚書に基づいて、私たち管理組合は、隣接のマンションと合同で、ライフと定期的に協議を行っています。その中で、照明による光害やイベントのスピーカー音の問題などは、その都度申し入れ是正してもらっていますが、やはり、解決できない問題もあります。

 例えば、外に置き去りにされた犬の鳴き声や、早朝の運搬車輛のエンジン音や金属音、明る過ぎる店舗照明など、今でも、我慢しながら生活をしている部分があります。その対策として、高木の植樹やオーニング(テント)・ベンチの設置などを提案していますが、なかなか聞き入れてもらえないのが実状です。

 これらの案は私が提案したものですが、「中央通路を潤いのあるゾーンに改善することにより、来店者が休息したり語りあったりできるほか、音・光なども遮ることができるのではないか?」というのが私の考えです。皆さんは、どう思われますか?

 最後に、ライフ大倉山店は、私たち対策委員会とこのように長い長い交渉を経て、オープンしたのだということを、是非とも、皆さんの記憶に留めておいていただきたいと思います。

  また、近隣の方々は、近くにスーパーができて便利になったと思いますが、その反面、我慢しながら生活している人がいることを、少しでも理解していただければ嬉しい限りです。現時点では、ライフの車での利用客が少ないおかげで、交通への影響があまり出ていないのが不幸中の幸いですが、今後どうなるか分かりません。最後に、この対策委員会に参加いただいた多くの有志の方々に感謝申し上げます。

 
 オープン後のことは、別の機会に書きたいと思っていますので、そのときは、また読んでいただけると幸いです。