2019/09/01

虎ノ門・麻布台再開発は本当に「新時代の生き方提案」になるのか?

虎ノ門・麻布台地区再開発事業
 森ビルの「虎ノ門・麻布台地区再開発事業」は、2023年3月の完成を目指して、計画の概要が発表されました。
 計画地は、麻布通り・外苑東通り・桜田通りに囲まれた東京港区の都市再生緊急整備地域で、「六本木ヒルズ」に匹敵するほどの広大なエリアです。最寄り駅は西側に南北線「六本木一丁目駅」、東側に日比谷線「神谷町駅」がありますが、2駅とも再開発ビルと地下通路で結ばれるという壮大な計画で、総事業費は5,800億円が見込まれています。

「新時代の生き方提案」
 施設は、約6,000㎡の中央広場を中心にオフィス・住宅・ホテル・インターナショナルスクール・商業施設・文化施設などの多様な都市機能を融合させた「ヒルズの未来形」としての街が誕生するとのことですが、中央広場をはじめ多くの緑地を設け、さまざまな人が交流したり、くつろいだりできる空間を創出し、「新時代の生き方提案」を行なうとのことです。

「超高層ビルが3棟」
 メインタワーの高さは、すぐ傍にある東京タワー(333m)に匹敵する約330mで、2023年の完成時には、大阪の「あべのハルカス」(300メートル)を抜き日本一となる予定です。そのほか2棟の200mを超す高超高層ビルと低層ビルとからなり、延べ床面積と集客力で六本木ヒルズを上回る構想です。
 超高層ビルの高さをめぐっては、三菱地所が、JR東京駅北側の常盤橋地区(東京都千代田区)で進めている「常盤橋再開発プロジェクト」で、高さ約390mのビルの建設を計画しており、こちらは2023年度着工、27年度完成の予定ですので、いずれこちらが日本一の高さになるようです。

「壮大な計画には建築魂がワクワクする一方・・・?」
 この地区は、老朽化した低層家屋の多く残っていた密集地域で、土地の有効活用、都市の健全化、活性化、防災面からも再開発は致し方のない地区だと思いますし、これだけの壮大な計画には、ワクワクする建築魂を自分でも抑えられないのも偽りのない気持ちです。

「経済政策による再開発の恩恵は大手不動産会社と高所得者!」
 しかし、日本の都市計画は、経済優先でどちらかというと場当たり的で現状容認型の傾向が強く、とても計画的とは言えません。もっと俯瞰的に言うならば、東京ばかりに一極集中が進み、地方との格差がどんどん広がっています。さらに、都市再生特区国家戦略特区の名の下、大都市の中心部では「容積率」の大バーゲンセールが行なわれ、地価が高騰し、優良企業や高所得者しか住めない構造が進んでいます。また、超高層ビルの建築ラッシュ(超高層ビルが乱立すること自体も問題です。)により、中心部では夜間人口、昼間人口とも増加し、公共交通や学校などの公共施設が飽和状態になるなど社会問題にもなりつつあります。
 経済政策により、大手不動産会社が手掛ける大都市の再開発事業ばかりに多額の国費が注ぎ込まれ、結局、その恩恵を受けるのは当事者の大手不動産会社であり、地権者です。また、経済効果による税収UPが見込める国や自治体です。何とも腑に落ちません。とても「新時代の生き方提案」などは望めません。貧富の格差の象徴にしか思えないのです。
 もっと、経済最優先から脱却して、国や地域全体の活性化とバランスを考慮した国土計画や都市計画に改めない限り、切り捨てられる地域や人々がどんどん増え続け、日本は本当に沈没してしまいます。
 
「市場経済優先主義に人類の未来はあるの・・・?」 
 私は、現代の日本や主要な世界の国々が市場経済を優先するあまり、将来に不安を覚えます。この市場経済優先主義が続く限り、地球上の人口は増え続け、食料は枯渇し、温暖化は進行し、いつのまにか人類が住めなくなるのではないかと案じています。しかし、人間とは愚かなもので、滅亡するという実感がない限り、その欲望は抑えられないのでしょう?さらなる経済的豊かさを貪欲に求めています。
 残念ながら、私にも良い案が思い浮かびません・・・?。

2019/07/29

今回の「京アニ放火事件」に関して一言


防火区画竪穴区画

 建築基準法では、建物が火災になった際、火炎や煙・有毒ガスなどが延焼、充満するのを防ぐために、室が一定の面積以下となるよう、また、その部分(室)の用途に応じて水平に区画(防火区画という)するよう定められています。
 また、炎や煙は凄い勢いで吹き上げられることから、階段や吹き抜け(竪穴という)などでは、その他(室)の部分とタテに区画(竪穴区画防火区画の一種)という)することも義務付けられています。竪穴区画することは、他階への延焼を防ぐうえで重要な効果があります。

防火区画は逃げるための時間かせぎ!

 これら防火区画の目的は、建物内に残された人々が逃げるための最低限の時間かせぎのために、延焼や煙・ガスの拡散を遅らせるためのものです。
 つまり、平面的には、面積や用途に応じて防火区画し、階段などの部分は、その他(室)の部分と竪穴区画しているのが一般的なビルの構造です。

緩和免除は、ときに人命を奪う!

 当然のことながら、これらの法規制にも国民の経済的負担を軽減するために緩和免除の規定があります。竪穴区画が必要な建物は、「主要構造部である(壁・柱・床・梁・屋根・階段)を準耐火構造とした建築物、及び、それに準ずる特定避難時間倒壊等防止建築物のうち、地階又は3階以上の階に居室がある建築物」と条件が付けられていますので、それ以外の建築物は、竪穴区画しなくてもいいということになります(免除)。

 したがって、たとえ鉄筋コンクリート造3階建のビルであっても、これらに該当しなければ、また、その他の法規制にも抵触しなければ、竪穴区画が免除されることになります。おそらく、「京アニ」第一スタジオも、これらに該当しない「ロ準耐火建築物」であろうことが推察されます。

 この「ロ準耐火建築物」は、主要構造部を不燃材料で造り、屋根材に類焼に強い材料を使用する構造です。つまり、他所からの火災(類焼)には一定の防火性能を備えていますが、内部からの火災には脆弱と言われている構造です。

 今回の「京アニ」第一スタジオの場合も、内部からの放火のため、竪穴区画されていない2階・3階へ火炎や煙・有毒ガスが一気に上昇し、上階ほど犠牲者が多くなったのではないかと想像されます。

建築基準法は最低限の基準!

 建築基準法は、最低限の基準を定めたものであり、この法をクリアしているからといって残念ながら命が守れるわけではありません。まして、今回のようなガソリンを使った残忍で残虐な放火(テロ)事件などには無力としか言いようがありません。

法の上を行くリスクマネジメントが必要不可欠!

 勿論、このょうな事件を起こした犯人が最も許せないのは言うまでもありません。また、揮発性の高い危険なガソリンが、いとも簡単に購入できたことも疑問ですが、何と言っても、事業主のリスクマネジメントが必要不可欠であると痛感させられました。

建築家は建築主と建物の評価(定量化)を共有

 そのためにも建築家は、建物の機能やデザインを提案するだけでなく、小規模の建築物であっても、火災や地震などいろいろなリスクに対する建物の評価(定量化)を事業主と共有する必要があると思います。もし、火災発生時の避難に対する評価がなされていれば、ここまでの犠牲者が出なかったのではないか・・・?残念でなりません!

火災による死者の数は増加傾向!

 ニュースを見ていて気になることの一つに、火災が発生するたびに必ずと言っていいほど死者が出ます。また、その数は増加傾向にあり、火災の発生件数そのものは変わっていませんが、新建材、装飾材、衣類、家具調度品等が石油化学製品を原料としているものが多いため、ひとたび火災が起きると、それほど大きくなくてもこれらから発生される煙や有毒ガスによって先に意識を失くし、死を招くケースが多いようです。

建築関係法を守っているだけでは命は守れない!

 建築関係法を守っているだけでは、従業員や家族の命を守ることはできないということだけは、肝に銘じていただければと思います。

2018/12/18

東京駅復原工事に思う

 12月12日、日本技術士会建設部会主催による「東京駅の変遷」をテーマとする講演会を拝聴しましたので、少し感想を述べさせていただきます。

 講演者は、次期土木学会会長(JR東日本OB、鉄建建設㈱代表取締役会長)の林康雄氏でした。2012年に完成した「東京駅保存・復原工事」にJR東日本時代から携わっていらっしゃった方で、内輪話も含めて興味のある話を聞くことができました。

 東京駅丸の内駅舎は、明治時代から複数の「お雇い外国人」にデザインを依頼したようですが、結局、イギリス留学の経験を持つ、ジョサイア・コンドルの弟子でもあった辰野金吾氏に設計を依頼したとのことでした。それぞれ当時のデザイン画を映像で拝見することができました。

辰野のデザインも3次案を経て現在の姿になったとのことですが、一般的にオランダ風と言われているらしいですが、イギリスに留学していたこともあり、イギリスのクイーン・アン様式をアレンジしたものではないかと言われています。辰野自身は、「ルネサンス様式」といっているらしいですが、ビクトリアン様式やルネサンス様式、ある部分にはバロック風の装飾など中近世ヨーロッパのいくつかの建築様式を自在に取り入れたようで、いわゆる「辰野式フリー・クラシック」と言っている人もいるようです。

東京駅丸の内駅舎は、1914年(大正3年)に創建され、その堂々たる姿で多くの人々に愛されてきましたが、1945年(昭和20年)、戦災により南北のドームと屋根・内装を焼失し、戦後、3階建ての駅舎を2階建て駅舎(木造)に復興し、60年以上も、仮設建築物の形で存在したことになります。

今回の「保存・復原工事」では、鉄骨煉瓦造として外観を創建時の姿に忠実に再現するとともに、地下階を新設し、機能の拡大を図っています。そして、大震災にも耐えうるため、「免震工法」を採用しています。

東京駅丸の内駅舎-2行幸通りから東京駅丸の内駅舎を見る

 しかし、復原工事の工事費を捻出するため、余った容積(丸の内駅舎の4倍近く)を活用することを考え出しました。それが、特例容積率適用区域制度(現在は、特例容積率適用地区制度)の法制化です。そこで、余った容積の大半を売却し、4~5百億円のお金を得たのではないかとのことでした。その容積は、すぐ傍の「丸の内パークビル」、「新丸の内ビル」、「東京ビル」、「JPタワー」、「八重洲開発ビル(八重洲駅ビル)2棟」に移転され、超高層ビルが東京駅を取り囲むように建てられました。

 以前、丸の内界隈は、31mの高さ制限が規定されていましたが、それも解除されたうえ、国の重要文化財でもある「東京駅丸の内駅舎」の容積が周辺に移転されたことから、「丸の内駅舎」は、どこから見ても超高層ビルを背に負うようになりました。すべてにおいて、経済最優先の施策から脱却しない限り、日本の歴史的建築物は、遺跡になってしまいます。東京駅丸の内駅舎は、多くの乗降客に利用されているからまだ救われますが、そうでない建築物が数多あります。また、歴史的建築物の外壁の一部だけが、新築の超高層ビルの外壁に貼りついたようなビルもよく見かけますが、これは、丸の内駅舎と比べても残念な限りです。

2018/11/11

KYBグループ・川金によるデータ改ざん

また、データ改ざん技術者倫理は?

 油圧機器大手の「KYB(カヤバ)」グループと川金ホールディングスによる免震・制振用ダンパーの「検査データ改ざん」が発覚し、再び、建築業界に激震が走りました。免振装置では、3年前に、東洋ゴムが国の性能評価基準を満たしていないにもかかわらず、データを改ざんして、免振ゴム(アイソレータ)を出荷していたことが発覚し、大問題となったばかりです。

工期の短い日本の建築現場!

 今回は、安全性については、過度の心配は無用と言われていますが、ほとんどのダンパーがこの2社の製品(この2社による国内シェアーは90%)ということなので問題は根深いと考えます。工期の短い日本の建築現場では、このような偽装をしてまでも納期に間に合わせようと、このような問題が発生するのではないかと思います。

日本企業全体の病巣か?

 これまでも、長年、他の業界を含めて数多くの日本企業がこのような不正を行ってきており、看過できない由々しき事態となっています。日本企業全体に蔓延しているのではないかと心配になります。

技術立国日本の行く末に暗雲!

 仮に、安全性に問題がないとしても、世界において、日本企業の信用失墜は免れないでしょう。そうでなくても、いろいろな分野で日本の技術は、世界に水を開けられている状況です。

規則・マニュアルは絶対順守!

 今一度、「規則・マニュアルは、順守するためにあるもの」ということを肝に銘じて、かつ、チェック機能を強化してもらいたい。守らなくても良いものや過度の規制は、規則・マニュアルそのものを変えてもらいたい。

工期は重要事項にあらず!
 また、建築主においては、工期を建設業者選定の重要事項とする風潮を改める必要があります。

2018/10/28

未来の東京のアイデンティティを考える

Innovative City Forum 2018」に参加

 森ビル(株)が運営する森美術館とアカデミーヒルズ(理事長:竹中平蔵)・(一財)森記念財団都市戦略研究所(所長:竹中平蔵)との主催による「都市とライフスタイルの未来を議論する国際会議 Innovative City Forum 2018」が、2018年10月18日から20日までの3日間六本木ヒルズで開催され、今年は、18日・19日のプログラムの一部に私は参加しました。
Innovative City Forum

東京は、ロンドン、ニューヨークに次いで世界第三位の都市?

 「Innovative City Forum(ICF)」は、「都市とライフスタイルの未来を描く」をテーマに2013年から毎年開催している国際会議です。国内外の科学者、研究者、技術者、アーティスト、デザイナー、企業経営者、ジャーナリストなどを招いて、科学技術の進展等による未来のライフスタイルや、その生活を支える都市の未来について過去5回にわたり開催されてきました。

 この会議に先立って、森記念財団の都市戦略研究所が5年前から始めている「世界の都市ランキング」が公表され、今年も東京は、ロンドン、ニューヨークに次いで総合評価では3位でした。これは、あくまで森記念財団の評価であって世界的なものではありませんが、違和感を覚える人も多いと思います。東京は、ゴミは少なく道路だけはきれいになりましたが、それ以外の点では、世界NO.3の都市とはとても思えません。特に、街並の景観では、数多くの都市に劣っていると思います。

 今回は、18日の夕方に行われた「東京のアイデンティティ:時間の連続性と想像力がもたらす未来の東京らしさ」を傍聴し、面白かったのでその内容について簡記しました。

2018森ビルFORUM

未来の東京のアイデンティティは・・・?

 司会は、テレビでお馴染みの竹中平蔵先生(小泉政権時、経済財政政策担当大臣)が務め、パネラーには、二人の大学教授、作家、建築家と日本人勢が並び、右端の席に、流暢な日本語を話す美術工藝社代表である外国人のデービッド・アトキンソン氏が講演も含めて座りました。

 竹中先生ほか日本人のパネラーは、都市東京(江戸)の歴史や成り立ち、伝統、文化、史跡(江戸城)、将来の都市東京の方向性(点から線へ)、現代和風建築などについて、いろいろな話しをされましたが、これと言って興味深い話しや切り口もなく、至極一般的な話しに終始しました。結局、東京タワーやスカイツリーは、パリのエッフェル塔・凱旋門やニューヨークの自由の女神には足元にも及ばず、未来の東京のアイデンティティ(東京らしさ)とはどういうものか、何だかよくわかりませんでした。

訪日外国人から見た日本は・・・?

 ところが、ただ一人外国人であるアトキンソン氏は、日本人のパネラーとは思考や発想が全く違っていて、私が日頃から「日本人のここがおかしい!日本のここが変だ」!」と思っていることを言い放ってくれたような感じがして、とても痛快で面白かった。特に、国や地方のインバウンド政策の見当違いや、私達日本人が普段何気なく思っている日本の姿と、訪日外国から見た日本の印象との違いについて、辛辣な語り口で面白く話されました。

 彼の言いたかったことを私なりに要約しました。

① この10年世界では、外国人旅行者の数が3倍以上に急増しており、日本のインバウンドが3倍になったとて自然の成り行きで、国の観光振興策が功を奏したとか、日本の魅力が向上したとは言い難い。
② 国は、インバウンドの調査において、訪日外国人からのみアンケートを行い、訪日しない外国人の意見は聞かないので、インバウンドを増やすためのアンケート調査になっていない。
③いくら歴史的意義のある史跡や文化があっても、その説明もなければ実体験もできなく、外国人は、日本人が思っているほど日本文化には感動していないし、感動できない。
④外国人が高い航空券と宿泊費を払って日本に来るのは、楽しいバカンスを過ごすためであって、日本の歴史や文化を知りたいとか、日本食を食べたいとか、日本文化とのふれあいだけを目的に来ているわけではない。その国の人々の暮らしぶりや心が癒され豊かになるような自然、体験型ツーリズムなどを求めているのである。(一部には、買物中心のインバウンドもいるが・・・)
⑤外国人は、WiHi、ATM、カード決済などの使えないような国(日本)は、技術先進国とは誰も思わない。

排他的な日本人!

 東京は、複雑な交通網や雑然とした街並みが多いので、日本人であっても首都圏以外の人は、戸惑うばかりの都市です。また、日本人の排他的な性質が根幹にあるためか、局外者に優しくない不親切な案内板(標識・MAP・サイン・案内放送など)が多いので、訪日外国人が快適に旅行できるとはとても思えません。
 日本の標識や案内板は、案内誘導することよりも設置すること自体が目的となっているものが多いように感じます。これは、私の感想です。

アイデンティティは、自然と宿るもの!

 結局、アイデンティティは、考えるものではなく、創造するものでもないと思います。そこで生活し、そこに滞在する全ての人が、居心地良く、優しく安全に暮らせる都市の創造であり、多様な価値観や文化を許容することのできる懐の深さが、アイデンティティとなり、多くの人の心の中に自然と宿るものではないでしょうか。
 フランスでは、4000万人の国民に対して、年間8000万人の旅行者が毎年訪れますが、訪仏外国人のために何か特別なことをしている訳ではありません。

2018/10/07

豊洲市場の問題は、土壌汚染?施設計画?床荷重?それとも、・・・?

2年間延期して、その成果は?

 東京都中央卸売市場の一つである築地市場は、2年前の11月に豊洲へ移転されることになっていましたが、小池知事の誕生により、土壌汚染と事業費の高騰を理由に凍結されていました。
 ここにきて、10月6日に築地を閉場し、11日からの豊洲開場に向けて大引っ越しが徹夜で行われています。連日、テレビでもその映像を盛んに放送していますが、「この2年間は何だったのか?」と、疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。そのとおりだと思います。実態は、何も変わっていません!

さらに煽るメディア!

 また、一部のメディア(専門家?)では、動線計画が悪いとか、床荷重が不足しているとか、やれ設計ミスだと今でも書き立てています。
 しかし、動線計画床荷重などに関することは、一部の市場関係者の意見を取り込んでいるだけで、専門的に調査したわけでもなく、少し煽り過ぎの感が否めません。

「さよなら築地」

設計に関する権限と責任の所在こそ問題!

 今回の問題では、ほかに根本的な原因があるのではないでしょうか?以前、問題となった新国立競技場のときもそうでしたが、公共施設の場合、設計業務に関する権限とその責任の所在が曖昧で、役割分担が国民に見えないことです。
 つまり、設計者に対して、誰が、どういう設計条件に基づいてその設計業務を委託し、誰が、設計図を承認したのか、その協議・プロセスを含めて国民に見えないことです。

建築設計には、誰もが理想とするものはない!

 建築の設計業務は、発注者から与えられた設計条件を基に、法規定を守ることは最低限の責務ですが、公共性・社会性・経済性のほか利用する側の人たちの意見にも配慮しながら、自分達の設計思想とデザインによって、エスキスから詳細へと設計図を描いていきます。
 したがって、十の意見を十取り入れるのではなくて、取捨選択と代替案を検討し、全体にバランスの取れた施設計画へと纏め上げまて行きます。しがって、発注者は、そのことをよく理解し、国民に説明する義務があるのです。

世界の建築家は、日本のコンペには、もう参加しないのでは!

 その設計に対して、設計者の思想を尊重しつつ、設計条件に基づいて完成度を判断し、設計承認をするのが発注者の責務です。その協議・プロセスを含めて権限の所在が曖昧なため、誰が設計を推進したのか?誰が最終的に承認したのか?誰に責任があるのか?全く曖昧模糊としているのです。(逆に一部の民間企業では、越権行為も甚だしいワンマン経営者が居て、デザインを滅茶苦茶にする場合もありますが・・・これも困ったものです。)
 「赤信号、みんなで渡れば怖くない!」を続けていては、生産性が上がるはずもなく、世界の建築家から見放されてしまいます。もうすでに、そうかも・・・!

行政は、アトリエ派事務所ともトラブル!

 新国立競技場豊洲市場は、大手の設計事務所でしたが、規模は小さいがデザイン力のある「アトリエ派」とよばれる設計事務所においても、行政のコンペで受賞しながら、首長の交代などにより、設計業務に関する訴訟が増えています。それでなくても、民間工事の設計は、現在、そのほとんどが大手事務所に集中しており、官民そろって「アトリエ派」設計事務所の仕事が無くなってしまいます。これでは、建築界のノーベル賞と言われる「「プリツカー賞」など、今後、日本人が受賞することなどできないのではと案じています。

2018/08/09

平成30年建築基準法の一部改正について

平成30年6月改正建築基準法の公布

 最近の大規模火災をめぐる状況や防火関連の技術開発をめぐる状況等を踏まえ、①建築物・市街地の安全性の確保、②既存建築ストックの活用、③木造建築物の整備の推進の3点を主な改正の柱とする「建築基準法の一部を改正する法律」が、先の国会で成立し、6月27日に公布されました。その多くは、1年以内の施行となっていますので、政令や告示等は、これから制定されることになります。

 私は、7月23日に開催された「平成30年改正建築基準法に関する説明会(国交省担当官)」に出席してきましたので、今回は、その概要と私の意見を少しだけ綴りました。

① 建築物・市街地の安全性の確保

 平成28年12月に発生した「糸魚川市大規模火災」や平成29年2月の「埼玉県三芳町倉庫大規模火災」などによる甚大な被害の発生を踏まえ、建築物の適切な維持保全・改修等により、建築物の安全性の確保を図ることや、密集市街地の解消を進めることを目的に下記の事項が改正されたとのことでした。

〈改正内容〉
○維持保全計画作成対象建築物の範囲の拡大
これまで義務付けられていなかった大規模倉庫等にも、建築物を常時適法に維持するための維持保全計画の作成等を求める建築物の範囲を拡大。

既存不適格建築物への指導及び助言の追加・創設
 特定行政庁は、既存不適格建築物の所有者等に対して、これまでは、保安上必要な措置等をとることの勧告・命令は可能でしたが、予防的な観点から、建築物の適切な維持保全を促すための指導及び助言の仕組みを追加・創設。

上記2項目は、順当な改正だと思います。

○防火地域・準防火地域内における延焼防止性能の高い建築物の建蔽率の緩和 等
 防火地域・準防火地域内において、延焼防止性能の高い建築物の建蔽率を10%緩和。

建蔽率に10%を加えることができる建築物として以下の建築物を追加
 [1]防火地域(建蔽率80%未満)内にある耐火建築物と同等以上※1)の延焼防止性能を有する建築物
 [2]準防火地域内にある耐火建築物、準耐火建築物等

建蔽率を適用しない建築物として以下の建築物を追加
 [1]防火地域(建蔽率80%未満)内にある耐火建築物と同等以上※1)の延焼防止性能を有する建築物
 [2]準防火地域内にある耐火建築物、準耐火建築物等

 建蔽率の上積みには・・・?!

 この改正は、糸魚川市大規模火災の経験から、市街地にある防火性能の低い建築物の建替えを促進することが目的ですが、建蔽率の緩和(上積み)は、住宅地などの狭小敷地化・密集化を助長することになり、密集市街地の解消とは真逆の施策ではないかと思います。壁面後退や敷地の最低限度の導入とセットで建蔽率を上積みするのであれば理にかなっていますが、これでは、日本の市街地環境は悪化する一方で、地震対策としても、望ましくありません。

②既存建築ストックの活用

 空き家の総数は、この20年で1.8倍に増加しており、用途変更等による利活用を促進するため、また、活用に当たって、建築基準法に適合させるための大規模な工事を回避するため、下記の事項が改正されます。

〈改正内容〉
〇耐火建築物等としなければならない特殊建築物の対象の緩和
〇用途変更に伴って建築確認が必要となる規模の見直し(不要な規模の上限を100㎡から200㎡へ見直し) 等
 階数が3で延べ面積が200㎡未満の建築物を耐火建築物等としなければならない特殊建築物の対象から除くことで、戸建住宅等の空き家等を用途変更する際に、大規模な改修工事を不要とするとともに、手続を合理化し、既存ストックの利活用を促進。

 主に、3階建ての戸建住宅を児童福祉施設・商業施設等へ用途変更する場合に、「政令で定める技術的基準に従って警報設備を設けたものに限る」という条件付ながらハードルをぐっと下げるものです。

 これは、用途変更に限らず、都市計画区域外では、床面積が200㎡以下の新築・増築等は、確認申請の必要がない(4号建築物)ということになります。つまり、空き家を利活用して、グループホームや小規模児童福祉施設・民泊・店舗などへの用途変更が簡略化されることになると同時に、都市計画区域内でも、新築、増築等においても確認申請が簡略化されることになりますので、今後の展開が注目です。

空き家対策には、経済一辺倒ではなく、都市環境も考慮すべきでは!

 空き家は、安全面でも経済の面でも、いろいろな問題を抱えていますが、日本の場合は、欧米とは異なって、再利用に耐えられないような質の低い建物も多くあります。住宅から福祉施設等へ用途変更され、居住人口が増加し、一層過密で環境の良くない街になるのではないかと危惧されます。やはり、何でもかんでも利活用するのではなく、一定の良質な空き家を対象とするべきだと考えますが、如何でしょうか?

長屋又は共同住宅の各戸の界壁に関する規制緩和等(法30条)
 長屋又は共同住宅の天井の構造が、遮音性能に関して政令で定める技術的基準に適合する場合、各戸の界壁は、小屋裏又は天井裏に達しなくてもよいことになります。

 これは、民泊などへ用途変更する場合などの緩和措置ですが、 防火上主要な間仕切り壁については、すでに緩和されていましたので、所定の防音性能を有する天井も可とすることで、界壁を小屋裏まで到達させる必要がなくなります。つまり、空き家対策にも貢献することになります。


木造建築物等に係る制限の合理化

 必要な性能を有する木造建築物の整備の円滑化を通じて、木造に対する多様な消費者ニーズへの対応、地域資源を活用した地域振興を図ることが必要であることから、中層木造共同住宅など木造建築物の整備を推進するとともに、防火改修・建替え等を促進することを目的に以下の事項が改正されました。

〈改正内容〉
○耐火構造等とすべき木造建築物の対象を見直し(高さ13m・軒高9m超→高さ16m超・階数4以上)
 本改正で、耐火構造等としなくてもよい木造建築物が、3階建て(高さ16m)まで可能。

○上記の規制を受ける場合についても、木材のあらわし等の耐火構造以外の構造を可能とするよう基準を見直し
○防火地域・準防火地域内において高い延焼防止性能が求められる建築物についても、内部の壁・柱等において更なる木材利用が可能となるよう基準を見直し
 これまですべての壁・柱等が耐火構造を要求されていましたが、建築物全体の性能を総合的に評価することにより、耐火構造以外でも可能。(厚い木材による壁・柱等+消化措置の円滑化 など)
 防火・準防火地域の門・塀(2m超)は、不燃材料とすることとなっていますが、一定の範囲内で木材も利用可能。

耐力と防火性の高い積層木材の開発が課題!

 外国の木材価格の高騰により、日本の木材が利用できるようになったため、また、戦後植えた針葉樹の活用と森林保存を促進するため、日本の木材を見直そうということだと思います。新国立競技場に木材が多く使われるているのも同じ理由です。自然のままの木が一番良いですが、鉄よりも耐力があり、防火性の高い積層木材の開発に一層努めていただきたい。

④その他
〈改正内容〉
○老人ホーム等の共用廊下・階段について、容積率算定面積から除外
共同住宅から老人ホーム等への用途変更をしやすくし、既存ストックの利活用を促進するため、老人ホーム等の入所系福祉施設における共用廊下・階段について、共同住宅と同様に容積率の算定面積から除外されます。

〇「延焼のおそれのある部分」の定義の見直し
 「延焼のおそれのある部分」を一律2階以上は5mとしないで、火災の影響がある高さまでにする(外壁面と隣地境界線等との角度に応じて定める)というような緩和と考えられますが、詳細は政令・告示を見てからになります。

○仮設建築物・用途変更に関する緩和等
 興業場等の仮設建築物の存続期間を現行の1年から延長。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、仮設建築物がテストイベントやプレ大会時から本大会まで継続して設置され、1年を超えて存続する可能性があることから改正されました。

そのほか、
○用途規制の適用除外に係る手続の合理化
○接道規制の適用除外に係る手続の合理化
○接道規制を条例で付加できる建築物の対象の拡大
○特定防災街区整備地区内の建築物に関する規制の合理化 等

 久しぶりの大幅な改正となっています。大半は1年後の施行なので、今後とも、これから制定される政令・告示を注視して参りたいと思います。

2018/06/18

特区は誰のためのもの・・・?

地方の衰退は誰の責任?

 日本はバブル崩壊後、発展途上国への工場移転と一次産業の衰退により地盤沈下が進んでいます。特に地方では、大都市に人がどんどん流出して空洞化が続いています。地方の衰退は、少子高齢化が最大の原因のように言われていますが、そうではありません。世界でも類を見ないほどのゆるぎない中央集権国家がそうさせているのです。

 地方は、財源もなければ自由に施策を講じることもできなく、手足を縛られた状態です。その上、国は補助金や交付金を餌に、自治体が自ら考え、知恵を出し、汗をかけといった具合で、地方のことなど真に考えているとはとても思えません。

 ゆるキャラ、B級グルメ、ふるさと納税、観光資源の掘り起こしで地方は活性化するのか?

 そして、多くの自治体がやっていることは、ゆるキャラ、B級グルメ、ふるさと納税に観光資源の掘り起こしで、どこも皆同じようなものです。独自の産業やアイデンティティなくして、地方の活性化はあり得ません。

特区の決定は、公正公平透明性が重要!

 そこで、これではこの国の発展は望めないと思ったのか、「日本をぶっ壊す!」と言って総理になった小泉純一郎氏が、構造改革の一環として特区制度を導入したのです。特区そのものを否定するわけではありません。日本は、各業界ごとに、悪しき慣習・規制がはびこっており、地方にとっても特区は、多いに結構な制度だと思います。しかし、加計学園問題に代表されるように、その決定方法の不透明さとチェック機能のないことが最大の問題なのです。

 日本は、一事が万事同様ですが、この国の最大の欠点であり、最大の課題てあると思います。また、情報開示も、民主主義においては国民の重要な知る権利ですが、これも、欧米にかなり遅れを取っています。

特区は、真に国の起爆剤となるべし!
 
 特区は国全体の発展と活力向上の起爆剤にならなければなりません。権力を持った一政治家や一企業の営利目的であってはならないのです。

 野党もあげ足を取るだけの薄っぺらな抵抗ではなく、特区の中身を十分に議論して、国のため、地方のためになる施策に正して貰いたい。でなければ、政権交代など、二度と起こるはずもありません。

2018/05/27

住宅街の無電柱化は可能か・・・?

都市基盤が脆弱な日本の都市!

 以前にも述べたように、日本の都市計画は、ほとんどが現状を追認したもので、決して、望ましい都市の将来像を描いているとは言い難いものです。

 そのため、狭隘道路の解消などは一向に進まず、個人の宅地はどんどんが狭小化され、防災面でも環境面でも良くなるどころか悪化しているところもあります。社会的問題ともなっています保育園の騒音問題、住宅の日照問題、低層・高層建築物の混在、住宅・商業施設の隣接など、都市環境の悪化、トラブルが絶えません。また、非効率な土地利用により、狭い国土が余計狭くなっています。

世界の都市は無電柱化が当り前!

 そのような状況にもかかわらず、日本では、電柱・電線が路上に張り巡らされ、街の景観を損ねているばかりか、最近では、倒壊により交通を遮断する恐れがあることから防災面でも危惧されているところです。欧米はもとより、現在では、アジアなどの主要な都市でも無電柱化が進んでおり、日本の立ち遅れが顕著になってきています。

唯一、無電柱化推進法は某都知事の功績?

 そのような折、某都知事の成し得たことで、唯一、評価されるのは、無電柱化推進法を立案し、無電柱化推進条例を定めたことです。しかし、これを実現するには、ケーブルやトランスなど地上機器を設置するために歩道や公有地の確保が必要となりますが、先に述べたように歩道のない狭い道路ばかりで、困難を極めることは目に見えています。

「壁面後退」と「敷地の最低限度」は、最低限の規制!

 そこで、私が、提案するのは、せめて、1~2mの壁面後退を法制化し、そのスペースを活用して、地上機器などの設置を可能とする方策が必要不可欠ではないかと考えています。そのためには、敷地の最低限度も導入し、敷地にある程度のゆとりを持たせ、狭小敷地化に歯止めをかけなくてはなりません。

 そうすれば、無電柱化が推進するばかりでなく、現道の幅員でも通行環境が改善され、環境面でも防災面でも効果があると思いますが、如何でしょうか?

2017/11/20

日本の心配事(2)

切り刻まれる国土

 最近,首都圏において特に目立つようになりましたが,狭い土地が分筆され,軒を連ねるように2棟,3棟・・・と住宅が連なって建てられたり,少し広い事業跡地などでは,袋小路の私道を挟んで6棟~10棟と密集住宅地が造られたりしています。所謂,ミニ開発と呼ばれるものです。

 その原因は,高騰化した土地価格のために,相続税を賄うためであったり,収益性からであったりと,そのほとんどが経済的理由からです。しかし,根本的な原因は、日本に真の土地利用計画,法律(国土利用計画法,都市計画法,建築基準法等)がないからです。現在の法律では,外国からも揶揄されているように,ほとんど野放しに等しく,市場(経済)任せ,成り行き任せとなっています。将来の国土の姿(グランドデザイン)などとても描けない状態です。

3階建住宅狭小敷地に拍車

 また,1987年の建築基準法の改正に伴い,準防火地域での木造3階建住宅が解禁されたことで,より狭小敷地に拍車をかけることにもなりました。その理由は,3階建は2階建に比べて,同じ床面積を確保するのに最低限必要な敷地が狭く(狭小敷地)て済み,サラリーマンでも手の届く住宅価格になるからです。テレビで持て囃しているところの「狭小建築物」もこの類いです。

その結果,土地の狭小化はどんどん進み,1筆の土地が2つ,3つ,4つ・・・と,建築可能な極限にまで分筆され,それぞれ目一杯に住宅が建てられているのが現実てす。

狭小敷地
<狭い土地を2分割! 1棟⇒2棟へ建築中>

都心部の再開発には多額の国税投下

 その一方で,都心部を中心に,多額の国税を注ぎ込み,土地の集約化と高度利用を目的に,市街地再開発事業などが施行されており,超高層ビルが此処彼処と建てられているのも現実です。

日本の土地利用計画は「頭隠して尻隠さず」

 つまり,日々,土地の狭小化がどんどん進む一方で,再開発事業なとにより土地の集約化も同時に進行しているというのが日本の現状なのです。日本の土地利用計画は,「頭隠して尻隠さず」と,いう訳です。

日本の国策は,税収UPが最優先課題

 国としては,住宅産業,不動産業が活発になり,税収がUPすることから推進している政策なのです。つまり,経済が良くなり,税収さえ増えれば,「国土など,どうなろうとも知ったことではない」と言わんばかりの姿勢で,不作為以外の何ものでもないのです。観光立国と言うには程遠い土地利用計画であるということを認識すべきなのです。

真の「国土づくり,都市づくり,まちづくり」へ施策を転換!

 しかし,このままでは,「安全・安心な都市づくり」,「地震・災害に強いまちづくり」,「都市景観の向上」などに,全く逆行することになります。木造3階建住宅は,防火規制が多少付加されていますが,火災や地震に強い訳ではありません。震災復興とともに,真の「国土づくり,都市づくり,まちづくり」のための土地利用計画に,今すぐに転換しなければ,この国は取り返しのつかないことになることだけは明白です!